2023/02/27
結成は2016年6月、そこから約6年半後の2023年1月に1stフルアルバム『MUSIC WORLD』をリリースしたALI。そのリリースツアーのファイナルが東京・EX THEATER ROPPONGIで行われた。
ALIのCÉSAR(G)、LUTHFI(B)に加え、サポートのBOBO(Dr)、JIN INOUE(Key)、Nadia(Cho)、ホーン隊のあっきー(Tp)、YOSHIO(Tb)、屋嘉一志(Sax)という8人がステージに現れ、定番の「仁義なき戦いのテーマ」からライブはスタート。フロントマンでありリーダーであるLEO(Vo)が登場し、「東京!」と叫んで「Dance You, Matilda」になだれ込む。いきなり炎を燃やし尽くすようなオープニングだ。
LEOが「ALI、始めます!」と声を上げて、「EL MARIACHI」へ。『MUSIC WORLD』の序盤に収められた、どストレートのラテン曲だ。ALIのライブを観ていると「私は一体どこにいるんだろう?」と錯覚することがある。それほどに時代も国籍も、すべてのボーダーを消滅させたような多種多様なレベル・ミュージックが鳴っているからだ。その感覚は、タイトル通り世界各国の音楽を凝縮した『MUSIC WORLD』を経たライブだからこそ、一層増した。
LEOが「東京、帰ってきたぜ! 最後まで楽しんでいってくれよ!」と叫ぶと、真っ白なドレスに身を包んだSARMが登場し、「IN THE MOOD FOR LOVE feat. SARM」を披露。1曲とは思えないほどの濃密なエネルギーを叩きつけた。この日のライブはSARM以外にも何組ものゲストの出演が予定されているわけで、4曲目ですでにピークタイムのような状況を考えると、この後どこまで熱量が増大していくのか、恐ろしさすら感じる。
「みんなで踊り狂おうが、叫ぼうが、歌おうが、愛と尊敬を持って楽しんでいきましょう!」とLEOが口にする。ファンキーなホーンが轟き、ミラーボールが回る。「SHOW TIME feat. AKLO」だ。2021年、元メンバーの不祥事により、約半年間の活動休止に追い込まれたALI。一番大事な音楽を奪われ、絶望の底に落とされながらも、唯一の希望だったのが、「LOST IN PARIDISE feat.AKLO」を入場曲に使い続けてくれたロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手の活躍だった。再び光に向かおうという意志をプリンスばりのファンクに乗せた楽曲は、2番でAKLOが登場し、タイトなラップを披露。フロントに立つALIの3人のステップの息の合いっぶりが目を引く。ALIのグルーヴが完全に体に染み込んでいるからこそなせる技だ。
盛り上がるオーディエンスに向かって「音楽っていいな。楽しんでるかい?」とLEOが話しかけると、「YES」の意を示す歓声が上がる。『MUSIC WORLD』だから日本製の楽曲も入れたいという想いにより、LEOが敬愛する山下達郎と吉田美奈子というゴールデン・タッグによる名曲「SPARKLE」のサルサ調カバーが生まれた。LEOが気持ち良さそうに「SPARKLE」を熱唱する横で、CÉSARとLUTHFIは笑顔を浮かべて楽器を鳴らし、まさにALIが掲げる“音楽万歳”な光景が広がる。
「俺たちすべてを失いかけたときがあって、それでも音楽があった。テレビに出させてもらったのも、こうやって俺の好きなライブハウスという場所で音楽を一緒に感じたくて、聴いてもらいたくてやってきた。みんなのために歌うのでどうか聴いてださい」とLEOが言い、「MY FOOLISH STORY」へ。活動休止に入って最初に作った曲が「MY FOOLISH STORY」と「NO HOME NO COUNTRY」だった。音楽を奪われた状態のなかで、自らの人生の痛みととことん向き合い、懺悔し、立ち上がるためのバラードが響く。
本編ラストのブロックは、KAZUOを呼び込み、まずは、2019年11月にリリースされた、自主制作による1stシングルのタイトル曲「Wild Side feat.KAZUO」を披露。さらに、LEOとKAZUOとNadiaの歌/ラップの掛け合いがスリリングな「NO HOME NO COUNTRY feat. KAZUO」に繋げる。「FIGHT DUB CLUB feat. KAZUO」では、ステージでも客席でも勢いよくタオルが回り、クライマックスを更新していく。「LOVE, MUSIC AND DANCE」というALIの信念が書かれたタオルを掲げ、ステージを後にしたKAZUO。その横でLEOも同じタオルを掲げる。
ALIの名を世界中に広めたあのイントロが聴こえる。「LOST IN PARAIDSE feat. AKLO」だ。AKLOが登場し、サビではオーディエンスが一斉に手を左右に振って大盛り上がり。興奮が充満する場内に向けて、「死にたくなるような夜を何度も乗り越えてきた俺たちだから、今こうやって今までの人生で一番人が多いワンマンの人たちの前で、人生は美しいなって思います。誰も肯定してくれないとしても俺が肯定してやるよ。お前の人生は美しい。生きる価値があるって」とLEOが言い、アルバム『MUSIC WORLD』のラストを飾る「(BUT)WONDERFUL」へ。血まみれであり、痛みはあるが、人生は美しいと歌うALIなりの人生賛歌だ。魂を燃やすようなLEOの歌にNadiaのコーラスが重なり、説得力を高めていく。「辛い日も悲しい日も一緒に生き抜いていこう。また会う日まで、音楽が武器となって、そばにいて助けてくれますように。Life is wonderful and beautiful」とLEOは言い、一旦ステージを後にした。
アンコールの「NEVER SAY GOODBYE feat. Mummy-D」では、ヘヴィーなアンサンブルのなか、スーツ姿のMummy-Dが登場。サビではMummy-DとLEO、ふたりで拳を突き上げて、共闘宣言のような様相を呈した。
LEOが「国籍、性別、肌の色、悲しみ、怒り、全部乗り越えて、飛び越えて、俺はあえてこう言うぜ! 音楽は最高だって!」と叫んで、ALIコールがオーディエンスから沸き上がるなか、ラストの「Funky Nassau」に突入。ALIの3人がジャンプし、オーディエンスも楽しそうに踊る。すべてを越えようとする音楽の力が渦巻く。たとえ言葉が通じなくても、音だけで分かり合えるのだと言わんばかりの雄弁さがあった。
LEOは最後の力を振り絞るかのように激しく頭を上下させ、「音楽万歳!」と叫んで、さらに「一緒に生きようぜ!」と口にした。「自分たちには音楽しかない。君たちだってそうだろ?」と呼びかけ続けるような決死のパフォーマンスにより、2時間があっという間に過ぎていった。
Text:小松香里
Photo:Saiga-nagi
◎公演情報
【ALI 1st Album Release Tour -MUSIC WORLD-】
2023年2月26日(日)
東京・EX THEATER ROPPONGI
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