2023/02/10
1月10日、Adoが自身初となる全国ライブツアー【蜃気楼】の最終公演を東京・Zepp Haneda(TOKYO)にて開催した。
Adoにとって、この日はいろんな意味で人生の節目となった記念すべき一日だ。ちょうど6年前の2017年1月10日に、当時14歳だったAdoはニコニコ動画に歌ってみた動画を投稿し、活動を開始。昨年10月にAdoは20歳となり、ライブ前日の1月9日には各地で成人式が行われた。そんな大切な日に開催された初の全国ツアーの千秋楽でAdoが見せてくれたのは、 “一対一”でオーディエンスに向き合う真摯な姿勢と、ライブ・アーティストとしての確かな成長だった。
開演時間を過ぎ暗転すると、まずはスクリーンに幼少期の初音ミクとの出会いからAdoのこれまでの歩みを辿っていくスペシャル・ムービーが映し出される。ライブはメジャー・デビュー曲の「うっせぇわ」からスタート。ギター、ベース、キーボード、ドラムのバンド編成で、ステージ中央の白いベールに囲まれた大きなボックスの中にAdoが登場する。ガイドラインの改定で声出しがOKになったこともあり、オーディエンスの大歓声が迎え入れる。
「ウタカタララバイ」「私は最強」と、序盤はパワフルでアグレッシブな楽曲を続けて披露。Adoは華麗な身のこなしで舞いながら歌う。まず印象に残ったのは、ヘヴィなバンドサウンドとAdoの力強いヴォーカルの相性の良さだ。昨年8月の2ndライブ【カムパネルラ】でもバンド編成で歌っていたが、さらに一体感を増している。おそらくツアー各地の公演で様々な経験を積んできたのだろう。「ギラギラ」ではグルーヴィーなノリが生々しく伝わり、音源では軽やかなベッドルーム・ポップの「金木犀」もパワフルにアレンジされている。
中盤は、真っ赤な映像を背景にマイクスタンドを振り回しながら強烈なシャウトを響かせた「イート」、テクニカルなアンサンブルと巧みなヴォーカルが絡み合う「過学習」、レーザーが舞う華やかな演出とともに畳み掛けるように歌い上げた「リベリオン」など、ダイナミックなパフォーマンスを続けていく。椎名林檎が書き下ろした「行方知れず」の“静と動”のコントラストも含め、これだけの音圧の中で多彩なニュアンスを使い分けながら歌を表現していくAdoのヴォーカリゼーションはとにかく圧巻だ。ステージに仰向けに寝転びながら歌った「ラッキー・ブルート」、禍々しさすら感じさせる迫真の「Tot Musica」と、息を呑むような展開が続く。曲が終わるたびにフロアは感嘆のざわめきに包まれる。
終盤は、吐息のような声で歌い始めた「世界のつづき」から壮大な「風のゆくえ」と、アルバム『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』に収録された2曲のバラードを続けて披露した。ここまでのエネルギッシュなステージとは違う、丁寧で繊細な歌の表現に惹き込まれる。「風のゆくえ」の最後のアカペラにも目を見張った。
計13曲を歌い終え、「みなさんこんばんは、Adoです」とここで初めてのMC。「大変だったというのはもちろんあるんですけれど、すごく楽しかったです」とツアーについて語る。思い出や各地で食べた美味しいものを振り返り、ともにツアーを回ってきたバンドメンバーの高慶CO-K卓史(Gt)、櫻井陸来(B)、西村奈央(Key)、髭白健(Dr)を紹介した。観客からの呼びかけに応える微笑ましいやりとりもあった。こうしたオーディエンスとの直接のコミュニケーションの様子は、コロナ禍でデビューしたAdoのライブにはこれまでなかったもので、そのことも感慨深かった。
そして「私が大切にしている曲のひとつ」と、本編ラストの「心という名の不可解」を歌い上げる。神秘的でもありつつ生々しい臨場感も伝わる、とても不思議に胸を震わせるパフォーマンスだ。歌い終えると深々と頭を下げてAdoはステージを降りた。
アンコールは、メジャー・デビューから様々な現象を生み出し偉業を打ち立ててきたAdoの歩みを振り返り、ツアー各地のドキュメントを「そして、歴史は[今]へと続く」と締めくくったスペシャル・ムービーからスタート。再び幕が落ちると、振袖姿のAdoが「新時代」の歌い出しをアカペラで歌いながら登場し、観客に歓喜のざわめきが広がる。ウタの姿を映し出した映像を背景に「新時代」を歌い終えると、続くは「逆光」へ。会場の熱気は最高潮だ。
そして「アンコールありがとうございます」と再びMCへ。成人式に参加しなかったこと、けれどその思いを込めて振袖姿で歌ったことに触れ、「特別な時間をみなさまと一緒にいただいていると思います。心から嬉しく思います」と感謝を告げる。さらに「目を輝かせて未来に夢を抱いていたときのことを今でもしっかりと覚えています」と歌い手として活動を始めた14歳のときの記憶を振り返る。その一方で、今はAdoという名前が大きくなり、応援される一方で否定的なことや厳しい声を受けることも多くなって、苦しんだり、もがいたり、いろんな葛藤を抱えてきたことも率直に語った。
そして「ステージに立ってきた自分は、昔の自分が見ても恥ずかしくなかったと思います。私はこのステージでちゃんとAdoになれていたと思います」と、夢を抱いていた過去の自分の真っ直ぐな思いに支えられてきたこと、未来に向けて歩んでいく決意を語った。「この先にどんなことがあっても、私はみなさんと一緒に作ってきた蜃気楼を、この幻想的な時間を忘れません。みなさんも今日のことをどうか忘れないでいてくれたら嬉しいです」と語り、オーディエンスの大きな拍手がその言葉に応えた。
「まだまだ盛り上がる準備はできていますか?」と披露したラストの「踊」でこの日のクライマックスとも言える熱気を生み出したAdo。最後にはステージ中央にあったボックスを出てステージ前方に歩み「君の体温」を歌った。6年前の2017年1月10日に歌ってみた動画を投稿した、歌い手としてのAdoの歩みの始まりとなった曲だ。
終演後には、自身最大規模となる初の全国ホール&アリーナツアー【Ado全国ツアー2023「マーズ」】の開催も発表された。Adoのこれまでとこれからをドラマティックに魅せた一夜は、とても感動的な余韻を残して終わった。
Text by 柴那典
Photo by Viola Kam (V'z Twinkle)
◎公演情報
【Ado 全国ツアー2023「マーズ」】
2023年6月29日(木)埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
2023年7月1日(土)宮城・東京エレクトロンホール宮城(宮城県民会館)
2023年7月8日(土)香川・レクザムホール(香川県県民ホール)
2023年7月16日(日)福岡・福岡サンパレスホテル&ホール
2023年7月22日(土)新潟・新潟県民会館 大ホール
2023年7月30日(日)愛知・名古屋国際会議場 センチュリーホール
2023年8月12日(土)北海道・札幌文化芸術劇場hitaru
2023年8月20日(日)広島・広島文化学園HBGホール
2023年8月29日(火)・30日(水)東京・日本武道館
2023年9月9日(土)・10日(日)大阪・大阪城ホール
2023年9月16日(土)・17日(日)神奈川・横浜アリーナ
<セットリスト>
1. うっせぇわ
2. ウタカタララバイ
3. 私は最強
4. ギラギラ
5. 金木犀
6. イート
7. 過学習
8. リベリオン
9. 行方知らず
10. ラッキー・ブルート
11. Tot Musica
12. 世界のつづき
13. 風のゆくえ
14. 心という名の不可解
<アンコール>
15. 新時代
16. 逆光
17. 踊
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