2022/12/02
11月23日に神奈川・ぴあアリーナMMにて、2010年より毎年開催されているJMS主催ライブイベント【REDLINE】のアリーナ規模公演【REDLINE ALL THE REVENGE Supported by M】が3年ぶりに開催された。
日本の様々なロックやパンク、メタルなどの計17バンドが勢ぞろいした本イベント。<REDLINE STAGE><BEGINNING STAGE><BEAST STAGE>の3つのステージが共通のフィールドで展開された。
この日<REDLINE STAGE>のオープニングアクトを飾ったのは、JMS×WACKによるロックバンドオーディション「BRAND-NEW BAND STORY」にて2022年グランプリを獲得した3ピースバンド・totemぽぉる。「REDLINEはじめるぞ!」の掛け声と同時に勢いよく「I don't」でスタート。パワフルな3人のバンドサウンドが途端に響き渡る。立て続けに「プラトニック・ラブ」と「とびっきり!!」を炸裂。「アリーナ初めてなんですけど、声が反響して面白い、やまびこみたいです。やっほー!」とお茶目なMCもはさみ、「今日はいい日にしましょう!ありがとうございました!」と、拳を突き上げ「たそがれの街」を最後に披露。トップバッターに相応しく会場を大いに温めステージを後にした。
場内が暗転した瞬間に歓声が上がる。約3年前まではこれがいつもの流れだったけど、コロナ禍を経た今ではすごく新鮮だ。<BEGINNING STAGE>トップバッターを務めるFear, and Loathing in Las Vegasが最初に放ったのは「Get Back the Hope」。オートチューンの効いたSo(Vo.)のクリーンボーカルとMinami(Vo./Key.)のスクリームがまだ起き切っていない全身の神経を刺激していく。続く「Rave-up Tonight」ではSoが「踊れー!」と呼びかけるがその必要はなかった。すでに熱狂が場内を包み込んでいたからだ。これだけ瞬時に空間を掌握することができるのがFear, and Loathing in Las Vegasというバンドであり、だからこそトップを任されているのだ。その後も、「Let Me Hear」「Ain't That So Awesome」「Just Awake」とかっ飛ばしていく。ラストの「Luck Will Be There」が始まったときに周囲を見渡すと、さっきまで空っぽだったブロックの一番後ろまで人で埋め尽くされ、全員が懸命に手を振り、拳を掲げていた。ラスベガスが早朝のREDLINEに何を残したのかは一目瞭然だった。さあ、これから長く楽しい一日が始まる。
「ブルー・ライト・ヨコハマ」をSEに<REDLINE STAGE>に登場したTempalayは「のめりこめ、震えろ。」でアクトをスタート。ライブで披露するのはレアな「あびばのんのん」のカップリング「とん」を軽快に披露した後「へどりゅーむ」、続けて「どうしよう」へ。MCでは小原綾斗(Vo.)が「朝早くからみなさん頭振ってましたね。一旦落ち着いてください」とFear, and Loathing in Las Vegasのアクトを振り返りながらも、自身も時折絶叫しながらライブを繰り広げる。久しぶりの「春山淡冶にして笑うが如く」も妖艶に披露し、大団円的な「大東京万博」やラストの「そなちね」まで異空間のようなステージは続き、観客の体を気持ちよく揺らさせた。
<BEAST STAGE>のトップを飾ったのはTHE FOREVER YOUNGだ。サウンドチェック中にチューリップ「心の旅」のカバーバージョンを披露する大盤振る舞いで本番前からフロアを暖めまくった4人が1曲目にセレクトしたのは「今君を迎えにゆくんだ」。ミュージカル『アニー』のテーマソング「TOMORROW」をオープニングSEに、オガワリョウタ(Dr.)、タカノジュンスケ(Gt.)、ナカオタイスケ(Gt.)とともにステージに現れたクニタケヒロキ(Vo./Ba.)がこの曲をアカペラで歌い出すと、フロアからもシンガロングが巻き起こる。そしてエバヤンは、そのまま怒濤のセットリストを展開。さらにクニタケが「今、オレの声を耳に入れてくれてありがとう」と、これ以上ない言葉でオーディエンスに感謝を伝えたのちには、彼らとともに「FELLOWS」を大合唱。そして彼らは、フロアに背を向け、オガワのドラムセットと正対したタカノとナカオの雄叫びのようなコーラスと、クニタケのボーカルが絡み合う「HELLO GOODBYE」、超高速2ビートナンバー「GO STRAIGHT」を畳みかけて、ステージをあとにした。
続く<BEGINNING STAGE>には、現在ワンマンツアー【BLUE ENCOUNT TOUR 2022-2023 ~knockin' on the new door~】を走行中のBLUE ENCOUNT。「準備できてるよね? 始めるよ!」という威勢の良い掛け声でスタート。エネルギッシュなパフォーマンスを見せつけたTHE FOREVER YOUNGに続くように、会場を加熱させる。2013年以来、実に9年ぶりに【REDLINE】にテイクオフしたBLUE ENCOUNTの勢いは止まらない。「もっと光を」ではコール&レスポンス、「VS」ではジャンプを促し、オーディエンスとの距離を一気に縮めていく。気付けば1Fフロアは満杯に。「次に繋げるための音楽をやりにきました!」と未来に願いを込めて「バッドパラドックス」「HANDS」を披露していく様は、勇姿と呼ぶに相応しいだろう。
会場を後ろまでびっしりと埋め尽くすオーディエンスの中、<REDLINE>に登場したのはTHE ORAL CIGARETTES。1曲目にセレクトしたのは「mist...」。「どんどんかましにきました!よろしくどうぞ!」と山中拓也(Vo./Gt.)が言うと、そこから「5150」「ENEMY feat.Kamui」とステージを目一杯使ったパフォーマンスで、怒涛に畳み掛ける。山中の「さぁどんどん飛んじゃってください」の合図から「Naked」「BUG」「カンタンナコト」を披露。オーディエンスは拳を突き上げ、会場は常に最高潮。久々の声出し解禁で熱いシンガロングが沸き起こった「BLACK MEMORY」で、Age Factoryにバトンを渡しステージを後にした。
<BEAST STAGE>2番手のAge Factoryは、清水英介(Vo./Gt.)が「今日、この場にいることを最大限共有したい」「歌ってもいいんだぜ」と繰り返すとおり、2022年のREDLINEが声出しOKになったこと=オーディエンスとともに歌えることを祝福する内容に。清水のストレートなボーカルやギタープレイと、西口直人(Ba./Cho.)と増子央人(Dr./Cho.)が生み出すレイドバックしたグルーヴのマッチングが面白い「Dance all night my friends」や、アンサンブルの妙で魅せる「HIGH WAY BEACH」「1994」と、ライブ序盤は、しっかりシンガロングを巻き起こし、かつ、バンドのテクニックを存分に見せつける構成に。そして清水の「今日はみんなで歌いたくてセットリストを組んだんだ」という宣言とともに「TONBO」をキックしてスタートさせた後半戦でバンドは自らのギアを数段上げてみせる。その「TONBO」に「See you in my dream」「GOLD」と、前半戦以上のアッパーチューンのつるべ打ち。フロアはこれにさらに大きなシンガロングやクラウドサーフで応えていた。
本イベント中盤の<BEGINNING STAGE>には、ハルカミライが登場。小松謙太(Dr.)以外の3人はランウェイへいきなり乗り出す(ライブ終盤、小松も辛抱たまらず出てきた)。巨大フラッグを振って、楽器を持ったまま転げ回って、上裸になって、アンプの上から飛び降りて、もうめちゃくちゃで。だけど、全編シンガロングパートなハルカミライの欠片たちはひとつ残らず観客の胸に突き刺さり、その興奮は会場にいた全員の歌声となってぴあアリーナにこだまするのだった。
続く<REDLINE STAGE>は、今年25周年を迎えたDragon Ash。現在行っているライブハウス&ホールツアーと同タイトルの新曲「Entertain」で、エモーショナルに幕を開けた。コロナ禍から声出しの規制が緩くなったことを受け「今までよく我慢した! 好き勝手やっていいぞ!」と叫んだKj(Vo.)。「For divers area」「Iceman」と、ライブアンセムを次々たたみかけた後、短いDJタイムを挟み「Deep Impact」ではラッパ我リヤがゲストに登場するサプライズも飛び出した。「とんでもない時代だけど、音楽は負けない」と最後に披露したのは、Kjがコロナ禍で最初に制作した楽曲であり、新体制後初のシングル「NEW ERA」。ラストは5人揃って花道で深くお辞儀をし、様々な想いに溢れたステージを締めくくったDragon Ash。【ENTERTAIN】ツアーのひと場面を切り取ったようなアクトを魅せてくれた。
<BEAST STAGE>に登場したSHADOWSのライブは、彼らがハードコアパンクバンドであることをあらためて確認させてくれる内容に。Hayato(Ba.)とRyo(Dr.)という2人のサポートメンバーを従えたHiro(Vo.)、Kazuki、Takahiro(Gt./Vo.)の3人は「All I Want」や「Into The Line」をドロップ。爆音・高速・シンプルながらも、聴く者を確実に踊らせる、ヒップホップを経由した1990年代以降のハードコアパンクといった風情の楽曲群で、フロアのシンガロング、サークルモッシュ、ポゴダンス、クラウドサーフを誘ってみせる。また「Fall」プレイ前にはHiroが「サークルピットとか作ってみれば?」とフロアを挑発すれば、オーディエンスもビビッドに反応してみせる。その声に応えたフロアには先ほどよりも大きなサークルピットが現れ、客席最前線まで繰り出したHiroが「思いきり叫べ!」とシャウトすれば、彼らは雄叫びとともにHiroをリフト。バンドにそのまま「My Direction」に雪崩れ込ませるなど、バンドとオーディエンスは徹頭徹尾パンクマナーに則ったステージを繰り広げていた。
<BEGINNING STAGE>には、結成15周年を迎えたcoldrainが降臨。重厚なブレイクダウンが轟く「ENVY」から幕開け、「Help Me Help You」と間髪を入れずに披露。ラウドロックの真骨頂とも言える、圧倒的な技量を目にしたのは言うまでもない。セットリストに組み込まれた「The Revelation」や「No Escape」、「REVOLUTION」では、オーディエンスの声も加わって、より楽曲に磨きがかかっていく。コロナ禍前のライブが徐々に戻ってきていることを実感した。「同じ音楽を愛する仲間の声が聞こえていいよな!」とMasato(Vo.)も喜びの表情を見せる。ラストの「PARADISE (Kill The Silence)」では、正にコロナ禍の静寂を掻き消すようなシャウトでステージを去った。
幻想的なブルーのライト、SEと共に待ち侘びるオーディエンスのクラップが湧き起こる。Vaundyは<REDLINE STAGE>に登場するとステップを軽快にふみ、手始めに「不可抗力」を熱唱。一気にグルーブが会場全体を包みこみ、続けて「踊ろうか!」の掛け声で「踊り子」、「恋風邪にのせて」など人気ナンバーも折り込んだセットリストで、隅々まで染み渡るのびやかで力強い歌声と、オーディエンスの心を震わせる堂々としたパフォーマンスでひたすらに魅了した。
各ステージにはトリのアーティストが出演し始める。<BEAST STAGE>のトリを務めたのは我儘ラキア。ヘビーロックサウンド、ヒップホップサウンドを武器にシーンをサバイブ。現在、ネクストブレイク最右翼と注目されているライブアイドルグループだ。ライブ本編はエレクトリックなヒップホップナンバー「GIRLS」からスタートし、「Bite Off!!!!」「Leaving」などを展開。キラーチューン「SURVIVE」で自身のステージのピークを演出した彼女たちは「世界で一番攻めてる大阪のアイドル・我儘ラキアでした!」と自己紹介代わりのひと言を残して、ステージをあとにした。
時刻は18時40分、終盤戦に突入した【REDLINE】に登場したのはクリープハイプ。尾崎世界観(Vo./Gt.)は大きく息を吸って「ナイトオンザプラネット」をアカペラで歌い出す。小川幸慈(Gt.)の心揺さぶるようなワウも加わり、叙情的な歌詞の世界観を膨らませていく。その後は「しょうもな」 「一生に一度愛してるよ」とバンドアンサンブルが輝く楽曲をパフォーマンスしていく中、空気感をガラッと変えたのが「キケンナアソビ」。歪に鳴り響くギターフレーズと過激な歌詞が相まって耳に残る。インディーズ時代から幾度となく【REDLINE】に出演してきたクリープハイプ。尾崎はスタッフやオーディエンスたちに感謝を述べる。そして、長谷川カオナシ(Ba.)のベースソロから流れるように始まった「イト」 、ライブ一番の盛り上がりを見せた「HE IS MINE」と一気に駆け抜けていった。
<REDLINE STAGE>の紅一点、BiSHは、登場を待ちわびる清掃員(ファンの呼称)が待つ中で、「GiANT KiLLERS」のイントロと共に勢いよく登場。ロック・バンドの出演が多いイベントながらも既に会場はBiSHのホームのような空気感。MCではセントチヒロ・チッチが「みんなとひとつになれるこの時間を大切に大切に過ごしたいです」と話し、その言葉に会場から大きな声援と拍手が送られた。久しぶりの声援にメンバーも嬉しそうな表情で、それに応えるように「オーケストラ」が届けられた。【REDLINE】初登場を感じさせない、堂々としたパフォーマンスでオーディエンスを魅了した。
一見バラバラのようでいて、実際にライブを観ると一本ビッとした筋が通っている【REDLINE】。<BEGINNING STAGE>のトリを飾るのはHEY-SMITHだ。いつもの1.2倍ぐらいの体感速度でビートが疾走し、次第に緩急をつけながらも息つくヒマを与えずに裏拍の狂騒に巻き込んでいく。今回の【REDLINE】を通して一日中思ってきたことだが、会場一体となったパンクのシンガロングを聴けるのがうれしい。猪狩秀平(Vo./Gt.) の「思いっきり歌っちゃいますか!」という呼び掛けとともに鳴らされたのは「Summer Breeze」のイントロ。日本中のパンクキッズが渇望してきた光景が目の前に広がっていた。3年間ずっと欠けていたピースがピタッとハマった。「お前は絶対自由でいてくれよ!お前の自由のためなら、俺たちはなんぼで闘うぞ!」という言葉は、この場に集まった観客の支えになるはず。「一生忘れられない夜」というのは聞き飽きた修辞だけど、今日がその日だ。猪狩は最後に叫んだ、「俺たちは自由だーっ!」
<REDLINE STAGE>初の大トリとして1日を締めくくったのはThe BONEZ。花道中央へ向かいJESSE(Vo./Gt.)の「行けますか!」の合図で「We are The BONEZ」で開幕。ドライブ感満載の痛快なバンドサウンドが会場を包み込む。「Louder」ではクラップとシンガロングが沸き起こり、会場はどんどん彼らの良いペースにのまれていく。拳を高く突き上げ、オーディエンスが一体となり踊り出した「Numb」、モッシュが起こりすかさずJESSE自身も混ざり客席で歌い出した「Rusted Car」と立て続けに披露。途中「ある友達が俺より先に役目を終えて今日その人の家族が来てるんで、後藤ファミリーの為にこの一曲をやるので。力を貸してください。」と亡き盟友とその家族へ向けエモーショナルに歌い上げた「Sun forever」や、「見とけ、これが日本のバンドだ!」とステージ全体を目一杯使い、JESSEが小学生の観客をステージ上に呼び、大人になったらバンドやりたいって思えるようにという想いでステージ上の景色を見せてあげるなどのシーンも。最後は「REDLINEありがとうございました!」とオーディエンスの暖かい拍手の中ステージを去っていった。これが終わりではない、始まりだ。という音楽への貪欲さと想いがしっかりと届いたパフォーマンスだった。
Text by Billboard JAPAN
<BEGINNING STAGE>
Photo by 橋本塁(SOUND SHOOTER)
<REDLINE STAGE>
Photo by nekoze_photo
<BEAST STAGE>
Photo by MASANORI FUJIKAWA
vaundy/BiSH
Photo by MASANORI FUJIKAWA
我儘ラキア
Photo by nekoze_photo
◎イベント情報
【REDLINE ALL THE REVENGE Supported by M】
2022年11月23日(水・祝)
神奈川・ぴあアリーナMM
OPEN 09:00 / START 10:00
出演者:totemぽぉる、Tempalay、THE ORAL CIGARETTES、Dragon Ash、Vaundy、BiSH、The BONEZ、Fear,and Loating in Las Vegas、BLUE ENCOUNT、ハルカミライ、coldrain、クリープハイプ、HEY-SMITH、THE FOREVER YOUNG、Age Factory、SHADOWS、我儘ラキア
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