2022/11/18
メリーが、2022年11月12日東京・神田スクエアホールで結成20周年を締め括る「東京大ストリップショウ[グランドフィナーレ]~白い羊・黒い羊~」を開催した。今回は激しい曲で構成される"黒い羊"のライブをレポートする。
黒い羊のステージには、「黒い羊」と墨で書かれた大きな和紙が掲げられている。SEの「六本木ジャジー喫茶」が流れると、フロアは総立ち状態。メリーのライブに帰ってきたんだな~とノスタルジックに浸っているところに、登場したメンバーが繰り出したのは「バイオレットハレンチ」。トイレットペーパーが“メリー、ここに在り”と言わんばかりに左右から吹き上がる。「黒い羊」の文字は破り捨てられ、同じく墨で書かれたタイトルが出てきた。その演出も懐かしい。白い羊では静かにステージを見守っていたオーディエンスも、水を得た魚のように生き生きと、両手を左右に振り上げた。「やっちまおうぜ!神田―!」と煽ると、「ジャパニーズモダニスト」「絶望」とキラーチューンを畳み掛ける。白い羊では繊細に情感を表現していたガラのヴォーカルも、黒い羊では野太くがなっている。「窓」から続く「窓」では、勢いに乗れずガラが演奏を止め、もう一度やり直す場面も。結生のギターソロが冴えた「イエローガール」から少しインターバルを取り、「R-246」や「平日の女」の切ないミディアムナンバーをバンドサウンドでガンガン心に撃ち込んでくる。「さよなら雨(レイン)」は原曲の形で哀愁たっぷりに聴かせた。
箏曲の「六弾の調べ」をBGMに、「黒い羊へようこそ」「今日/たのしんで」などとガラが書道でMC。メジャーデビュー作『nuケミカルレトリック』からの人気曲「首吊りロンド」「溺愛の水槽」と2曲続けた後、ジャムセッションのような形で「オリエンタルBLサーカス」のイントロの“回せ回せ”を何度も繰り返す。「今日は20年分しつこくいくぞー!」とガラが叫び、さらに何度か繰り返された後、ようやく「オリエンタルBLサーカス」がスタートすると、フロアにヘドバンの海が広がった。「陽の当たらない場所」「千代田線デモクラシー」「梟」とメッセージ性の高いアップチューンで気持ちを昂揚させたところで、吉村氏を再び呼び込み、ラストの「夜明け前」を5人でのバンドサウンドで届けた。“立ち止まるな/振り返るな/終わりじゃない”。まるで自分に言い聞かせるように、絶叫しながら歌うガラ。メンバーを後ろから照らすライティングと、希望を鳴らすようなアンサンブルは、まるで夜明けの光のようだった。
アンコールでガラはマントを羽織り、学生帽を被ったバンカラ姿で登場。もう一度ギターを抱えると、「チック・タック」を再び。こちらは口笛も入った原曲に近いバージョン。後半にはガラのギター1本とヴォーカルだけになる見せ場もあった。これからの季節にふさわしい「冬のカスタネット」をしっとりと聴かせた後、「不均衡キネマ」「T.O.P.」「愛国行進曲」で一体感を作り、ラストは「15周年の時に作って、ずっと大切に歌ってきた曲を最後に歌います。俺たちと君たちの大事な曲です」と「群青」へ。君(ファン)と羊(メンバー)をタイトルにもつこの曲の中で、“一番近くで 照らし続けてよ 太陽”と歌う。“太陽”とはファンのこと。白い羊での「夜明け前」のアウトロでガラが“太陽”と連呼したのも、そういう意味だったのだろう。「群青」のアウトロでも、“太陽 照らしてください”と歌詞にないフレーズをつけ加えた。
リクエスト曲で構成した“黒い羊”では特に、メリーの王道と言える懐かしいタイトルが並んでいたが、この“白い羊・黒い羊”を見終えた後の印象として強く残ったのは、“今のメリー”の姿であり、今のサウンドであった。年月とともにバンドは確実に変化しているけれど、それがメリーらしくあればいい。そんなことを帰りながら思った。ライブ中、2023年1月4日(水)に東京・目黒鹿鳴館でニューイヤーライブを開催することを発表した。新章の幕開けを、彼らの原点である会場で行なうという。それもメリーらしい。やがて夜明けが来て、太陽とともに、陽の当たる場所にいるメリーの姿を見ていたいと思う。新しい一歩を踏み出したメリーの未来に期待を寄せて。
Text:大窪由香
Photos:中村卓 (2022.11.12@神田スクエアホール)
◎公演情報
【メリー 20th Anniversary東京大ストリップショウ[グランドフィナーレ]~白い羊・黒い羊~】
2022年11月12日(土)東京・神田スクエアホール
[~黒い羊~セットリスト]
SE 六本木ジャジー喫茶
1. バイオレットハレンチ
2. ジャパニーズモダニスト
3. 絶望
4. 窓
5. 夜光
6. イエローガール
7. R-246
8. 平日の女
9. さよなら雨
10. 首吊りロンド
11. 溺愛の水槽
12. オリエンタルBLサーカス
13. 陽の当たらない場所
14. 千代田線デモクラシー
15. 梟
16. 夜明け前
アンコール
17. チック・タック
18. 冬のカスタネット
19. 不均衡キネマ
20. T.O.P
21. 愛国行進曲
22. 群青
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