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2013/04/24

クリストファー・オウエンス 初のソロ公演で魅せる彩り豊かなパレット

 昨年ガールズを脱退し、今年1月にはソロ・アーティストとしての第一章となる『リサンドレ』をリリースしたクリストファー・オウエンスの初となるソロ来日公演が4月20日に代官山UNITで行われた。
 
 フランスで開催されたフェステイヴァルでのリサンドレという女性との出会いをもとに制作されたソロ・デビュー作『リサンドレ』。曲から曲へと事象の発生の順番で物語を紡いでいくコンセプト・アルバムということもあり、今回のライブはそのアルバムの収録順に沿って曲が披露されるというスペシャルなものとなった。SEで流れていたビーチ・ハウスの最新作『Bloom』からのナンバー「New Year」がフェードアウトすると、淡いクリーム色のジャケットにピンクのシャツでシックにきめたクリストファーが8人編成のバンドとともに登場。以前ガールズとしても立っているステージということもあり、リラックスした面持ちで椅子へ腰掛けると即座にアコースティック・ギターを手にし、「Lysandre's Theme」でゆったりとライブがスタートする。
 
 クリストファーが初めてニューヨークを訪れた際に感じた高揚感、期待感をサックスの音色が意気揚々と表現する「New York City」、まるで60年代にタイムスリップしたかのようなセルジュ・ゲンスブール風のパーカッシヴなメロディとクリストファーのガールフレンド、ドミナント・レッグスのハンナちゃんを含む2人の女性ヴォーカルのゆるりとしたセクシーなコーラスが印象的な「Riviera Rock」は、雰囲気満点。アルバムとは一味違ったアーシーでカントリーチックな「Part Of Me」など意欲的なアレンジで次々と曲が披露されるのだが、繰り返し演奏されるフルートによる「Lysandre’s Theme」の旋律が、一貫したテーマによって制作された作品であることを再確認されてくれる。彼を力強く支えるバンドも巧みで、特に他のメンバーより若干年上のフルート、サックス、ブルースハープなどを担当するオジ様がライブ・サウンドに注入するスパイスは絶妙。演奏をしていない時も心からステージを楽しんでいるかのように音楽に合わせ体を動かす姿には思わず笑みがこぼれてしまった。
 
 “曲が美しいか、愛すべきかは聴く人次第…僕がとやかく心配してもしょうがないんだ”とミュージシャンとしての葛藤とその生々しい心境を歌う「Love Is In The Ear Of The Listener」、そしてアルバムの中核となっているリサンドレとの出会いを歌った「Lysandre」などクリストファー・オウエンスという1人のアーティストのヒューマンな“音楽的”ポートレイトを約40分余り堪能すると、次は今作への影響が垣間見れるカヴァー・セレクションに突入。1曲目のキャット・スティーヴンスによる「Wild World」のイントロが流れるとわっと歓声が上がる。続けて「Lysandre's Theme」の旋律を彷彿させるドノヴァンの「Lalena」、「New York City」の詞に通ずるサイモン&ガーファンクルの「Boxer」、原曲がフランス語のエヴァリー・ブラザーズの「Let It Be Me」など珠玉の名曲たちをクリストファーらしい等身大の演奏で表現していき、ボブ・ディランの「Don't Think Twice It's Alright」というグッとくるカヴァーでライブを締めくくった。

 ライブ中はほとんど言葉を発することはなかったが、「Thank You.」とひとこと残し、笑顔でステージを去っていく彼の背中は、一人のソロ・アーティストとしての自信に満ち溢れていた。そして終盤では、マイクスタンドを始めステージ上のあらゆる場所に花を飾っていたガールズ時代の名残りなのか、ステージ脇に置かれていた真っ白なユリを1本づつ観客へプレゼントするという往年のファンには嬉しい演出も。60分弱という短いライブではあったものの、現在進行形の彼の魅力を余すこと無く堪能できた濃厚で貴重な時間だった。
 
【Christopher Owens セットリスト】
2013.04.20 代官山UNIT
Lysandre's Theme
Here We Go
New York City
A Broken Heart
Here We Go Again
Riviera Rock
Love Is In The Ear Of The Listener
Lysandre
Everywhere You Knew
Closing Theme
Part Of Me
----
Wild World (Cat Stevens cover)
Lalena (Donovan cover)
Boxer (Simon & Garfunkel cover)
Let It Be Me (The Everly Brothers cover)
Don't Think Twice It's Alright (Bob Dylan cover)
 
Photo: Teppei

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