2022/08/29
相変わらずの強さを見せるAdoと映画『ONE PIECE FILM RED』のタイアップ。2022年8月24日公開のBillboard JAPAN 総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100”では、首位の「新時代」を含む計7曲がトップ20圏内にチャートインした。しかも6位までに5曲入っているというのは前代未聞だろう。そんななかでAdoを脅かす存在として2位を記録したのが、Kis-My-Ft2の新曲「Two as One」だ(【表1】)。
Kis-My-Ft2にとって29枚目のシングルとなるこの曲は、メンバーの玉森裕太が主演するドラマ『NICE FLIGHT!』の主題歌となっている。ラップパートはありつつもミディアムテンポの大人っぽい落ち着いた楽曲でもあるので、幅広い層に受け入れられそうなナンバーだ。近作のシングルと比べても初動は好調で、フィジカルのCDに関しては圧倒的な強さを誇っている。
気になるのが、ストリーミングで24位を記録していることだ。ジャニーズはサブスク解禁していないアーティストが多いことで知られるが、Kis-My-Ft2はLINE MUSICの独占配信を行っており、プレゼント・キャンペーンも実施されている。このポイントはチャート上でも非常に大きい。もちろん、ラジオのオンエア回数やルックアップ数によるポイントアップも大事だが、しっかりとストリーミングで再生数を伸ばすことができれば、後々のロングヒットにつながる可能性があるからだ。
ただし、LINE MUSICでの限定配信というのは、どこまで効果的なのかは判断が分かれるところだろう。Apple Music、Amaozon Music、Spotifyといった大手サブスクでも聴けるようになればさらに広がる可能性はあるし、もっとポイントアップしたかもしれない。ただ、LINE MUSICとがっちりと組むことによって、ファンを集約させるというメリットも大きいので一概には言えない。とくにLINE MUSICは若年層に強いため、若いファンを取り込むにはいいかもしれない。一方、ドラマを観て聴いてみようと思った際に他のサブスクになければ、そこでチャンスを失う。それをYouTubeの動画がフォローできればいいが、そこはユーザーによってどのように楽曲にアクセスするのかは千差万別だ。
いずれにせよ、これまではフィジカルでしか聴くことができなかったジャニーズの楽曲が、手軽にアクセスできるようになってきたことは、コアファン以外にアピールするチャンスが増えたということでもある。ファンクラブ的な囲い込み施策ではなく、もっと外に向けたプロモーションをすることで、新たな活路が見いだせるかもしれない。そういった意味においても、少しずつサブスクを解禁することで裾野を広げつつも、ジャニーズが得意とするコアなファンをつかんでいくという両輪の施策が必要だ。まだ試行錯誤だろうが、サブスクを絡めたKis-My-Ft2の動きと結果は、今後のジャニーズの未来を変えていくのかもしれない。
Text:栗本斉
◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
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