2022/07/15
Mrs. GREEN APPLEが、ワンマンライブ【Mrs. GREEN APPLE ARENA SHOW “Utopia”】を7月8日に神奈川・ぴあアリーナMMにて開催した。
同公演は、Mrs. GREEN APPLEの“フェーズ2”始動後初となる、実に約2年半ぶりのライブ。会場にはミセスとの久々の再会を待ちわびたファンがいっぱいに詰めかけたほか、PIA LIVE STREAMでの生配信およびWOWOWでの生中継、また全国の映画館にてライブビューイングも行われ、全国のファンが彼らの再始動を祝福した。本稿ではこの記念すべきライブの模様をレポートする。
会場が暗転すると、幻想的なオープニングムービーがスタート。紗幕の後ろにうっすら大森元貴(Vo. / Gt.)、若井滉斗(Gt.)、藤澤涼架(Key.)のシルエットが浮かび上がると、観客の期待はどんどん高まっていく。扉が開く映像とともに、最新ミニアルバム『Unity』の世界観に合わせた、白と淡いピンクを基調にした衣装に身を包んだ3人が姿を現すと、会場いっぱいに大きな拍手が起こった。会場を見渡し、観客に手を振りながらそれぞれがスタンバイを始めると、いよいよ演奏が始まる雰囲気に緊張が高まる。そして、BGMが止むとほとんど同時に大森が歌い出したのは、<あぁ、どうか いつか>から始まる「Attitude」のフレーズだ。<この世は腐ってなんかは居ない。/どうかそんな歌を歌わせてよ/ずっと>と、まさに始まった“フェーズ2”への意思表示にも聴こえるこの曲からライブがスタートしたことに、観客も感嘆のため息を漏らした。
続く「CHEERS」では、今回のライブグッズであるリストバンド型ライト「Utopia Light Band」が演奏に合わせて発光する演出が。ピンク、黄色、水色といった原色のポップな光と、はじけるような大きい手拍子の音に包まれ、マイクを手に持ちダンスしながら歌う大森の姿が印象的だった。楽しい演出に興奮醒めやらぬなか、続く「L.P」では雰囲気を変え、ハードなサウンドに砂嵐が吹き荒れるような激しい光の演出で、観客を圧倒した。
MCパートになると、「ちょっと感極まっちゃってるんですけど……」(大森)、「ライブで、久々にお会いすることができてとっても嬉しいです。拍手も、笑顔とかの表情も、すごくこの3曲のなかで届いてきた」(藤澤)、「ただいま! ほんとにね、みんなに会いたかったんです。鼻声なのはさっきちょっとだけ泣いたからです」(若井)と笑顔を見せながら、久々のライブへの想いを明かす。「今は2年半前と違って、ちょっと声が出せないということで。拍手で感情表現をしてほしいなと思うんですけど、OKですか?」との大森の問いかけには、会場も全力の拍手で応えた。
さわやかなメロディーに観客が思い思いに体を揺らした「アボイドノート」を披露すると、なだれ込むようにアッパーな「StaRt」へ。コール&レスポンスができない代わりとでもいうように、見事に揃った<お手を拝借!>での手拍子がテンションを加速させる。藤澤も笑顔でステージを縦横無尽に駆け回って観客をあおり、会場はすっかりハッピーな雰囲気に包まれた。大森の繊細なボーカルワークが光る「道徳と皿」、英語バージョンと日本語バージョンをミックスしてEDM調のサウンドに乗せ、会場をさながらディスコに変えた「PRESENT」を抜けると、ミディアムナンバー「嘘じゃないよ」を披露。藤澤の素朴なピアノ、太く支えるような若井のギターの上に乗る大森の芯の強い歌声に、オーディエンスもじっとステージを見つめ聴き入っていた。
サポートメンバーの森夏彦(Ba.)、神田リョウ(Dr.)の紹介、大森と観客全員が拳を突き上げ盛り上がった「In the Morning」を終えると、「スペシャルゲストを呼びます! asmi!」との紹介で、サプライズゲストのasmiが登場。コラボ曲「ブルーアンビエンス(feat. asmi)」をふたりで歌唱した。少しハスキーで甘いasmiの声と、一本芯が通ったようなパワフルな大森の声の対比と畳み掛けるような掛け合いが美しい。asmiを見送ったあとは、しっとりとした「月とアネモネ」へ。大森のやさしい、切ない歌声と、桜並木に囲まれているかのような「Utopia Light Band」のピンクの光が幻想的だ。続く「延々」では一転し、攻撃的なサウンドに緑色の炎が吹き上げるダークな世界観をみせる。「君を知らない」ではまたしっとりしたムードに戻り、叫ぶような若井のギターソロ、<そう信じなきゃ やってられないな>と歌い上げる大森の声が切なく響き渡った。
目まぐるしい展開に観客が一息ついている間、MCは休止期間についての話題に。若井&藤澤の微笑ましい共同生活エピソードを経て、大森がこの休止期間に、数々の楽曲がストリーミング再生回数で華々しい記録を打ち立てたことについて話しだす。「この2年間の間にさ、ストリーミング20億いきました、みたいな連絡をスタッフさんからいただいたり。休止をして……拡大していってるっていうのがすっごい嬉しい気持ちだったんですよ。めちゃめちゃ曲を応援してくれてるんだなって思って」「ほんとね、たくさん愛してくれて、めちゃくちゃ嬉しかった。ひとまず2年間、休止期間、ありがとうございました」と、変わらぬ応援への感謝を語った。
「たくさん聴いてくれた曲やっちゃおうかな!」と告げ、大森の優しいギターの音色でスタートしたのは「僕のこと」。足下にスモークが広がり、まるで雲の上にいるようなステージで<僕らは知っている/空の飛び方も>と歌われる開放感がたまらない。続いて、しっとりとしたピアノソロが流れ、観客が次の曲に思いを巡らせていると、大森が「夏が始まったぞ!」と叫ぶ。一気にテンポが上がり、おなじみの「青と夏」のメロディーが流れ出した。曲に合わせて「Utopia Light Band」が水色に光るアリーナはまるで水面、キラキラ眩しいステージはまるで真夏の日差しのなかにいるよう……と、いかにも“夏”を体現するステージに会場の熱気が一気に増す。そのまま間髪入れずに「インフェルノ」へなだれ込むと、噴き上がる炎につられるように会場のボルテージはMAXに。大森のフェイクもライブ感をあおり、燃えるように熱いステージを作り上げていた。続く「うブ」はダンスロックチューン。紫と赤のギラギラした光に包まれ、リズムに合わせて飛び跳ねる観客も続出した。「ロマンチシズム」はキュートな曲の雰囲気に合わせ、絵本の街並みのような背景に合わせ、大森が動くステージの上を歩きながら歌唱する。“心の中”でのコール&レスポンスを求めるなど、観客との掛け合いも忘れない。そして一息つくと、おもむろに大森が手拍子をあおり始める。どんどん盛り上がった手拍子に包まれてスタートしたのは、ファンキーなサウンドにのせた応援歌「ダンスホール」だ。ダンサー8人が登場すると、サビでは大森もミュージックビデオで見せたキレのあるダンスを披露。これまでの“ロックバンド”の枠にとどまらないパフォーマンスで観客を楽しませた。
すっかり会場が多幸感に満たされていると、大森が「あの……編成が変わりまして、5人から3人になりました」と切り出し、その切実な雰囲気に会場はしんと静まり返る。「すごく大きな衝撃を与えてしまったと思うし、すごく寂しく、大きな出来事でした。でも、フェーズ2っていう新章が始まって、こうして僕らもいろんな不安のなか走り出せて、これだけの人たちが集まってくださって、ライブビューイングだったりとか、配信だったりとか、中継だったりとか……それがなんか信じられないというか。どういうMCをしたらいいかわからないくらいの気持ちで、やってます。ありがとうございます」と話すと、会場からは割れんばかりの拍手が起こった。「フェーズ1のことを語るのは、すごくこう……センシティブなものがあって。でも、ひとことで言うと、僕はほんとうにフェーズ1大好きだし……すっげえ楽しかった。青春でした」「でも、青春は終わったわけではなくて、また新しい出会いや別れやいろんなことを繰り返していくのが、生きていくことだというふうに思っています」「(フェーズ1は)すっごいあったかいものが詰まってる。僕らはそれをずーっと歌っていきます、今後も」と、大森はつぶやくように宣言した。
そして、「僕らのとっての青春ソング、歌います」との前置きで披露されたのは「Theater」。夕日のようなオレンジ色の光に包まれながら、切ない表情で想いを込めるように演奏する3人の姿に、会場も手拍子を忘れ引き込まれていた。続く「Part of me」では、大森がセンターステージにひとり立って歌い出す。藤澤のピアノのみの伴奏で、歌詞を噛み締めるように休み休み歌う姿に、観客も息をのむ。ラストのサビでは、大森の立つセンターステージが柱のように眩しく光るなか、<今日のこの倖せだけは/何にも変えられない奇跡だと/素直に思える僕が居る>と今日のライブを見ているファンへ届けるように歌う姿が神々しく、観客も手を振らずにただただ見入ってしまうような圧巻のステージだった。
アンコールは、疾走感たっぷりのロックチューン「我逢人」でスタート。客席に笑顔を向け、喜びを爆発させるような3人の演奏に、観客も大きな手拍子で応えた。お知らせとして、11月からのバンド初のZeppツアー【Mrs. GREEN APPLE ゼンジン未到とリライアンス~復誦編~】の開催を発表したあとは、それぞれが感謝の想いを語る時間に。「僕らの休止期間は、ほんとに自分たちだけじゃ乗り越えられなかったものだと思っています。正直、つらいときもありました。けど、たくさんの方がサポートしてくれて……こうやって今日ここに立ててることがほんとに、嬉しいです。すべての人に、ありがとうございます!」(若井)、「約2年間休止していて、もちろんフェーズ2、またみんなに会うための期間として頑張ってたんだけど。やっぱね、不安になることもいっぱいあったし。みんなが、ほんとに待ってくれてるのかな?っていうか……だから、フェーズ2が始まって、みんながリプをくれたのもすごく嬉しかったし。たくさん、みんなの声を聴いてます。こうやってライブをみんなとできて、楽しい時間を過ごせるのは、ほんとに幸せなことだなと思いました」(藤澤)、「真面目にやりすぎて活動してきたもんですから、すごいつらかったし、休みたいって言っちゃったし……いなくなっちゃう人とか出てくるし、すっげえ怖いし、不安だったんだけど。ほんっとに今日よかったです。ありがとうございます」(大森)と、涙を浮かべ、時折言葉に詰まる姿を見せながらコメントした。
「生きるのが大変な人の味方でありたいし、味方でいてほしいです。みんなも明日を越えていきましょう。がんばろう!」と観客へエールを送ったあと、「フェーズ2、一発目の曲を聴いてください!」と大森が叫ぶと、「ニュー・マイ・ノーマル」を披露。演奏終了後は3人が会場のあちこちを駆け回って何度も深々とお辞儀をし、約3時間のライブが幕を下ろした。
2020年7月8日、突然発表された“フェーズ1”終了の知らせから、今年3月18日の「ニュー・マイ・ノーマル」リリースによる“フェーズ2”開幕まで、約1年8か月。その間、世間では新型コロナウイルスの流行、またミセスはメンバー2人の脱退と、大きな変化のなかを闘ってきた。ミセスにとって、そして彼らとの再会を待ちわびたファンにとって、その変化を乗り越えた先にあった今回のライブはまさに“Utopia”=理想郷だったのだ、と実感させられるほど、お互いへの愛と喜びに満ちた、観ていて幸せな気持ちになるライブだった。こんな素敵な景色を作り上げたMrs. GREEN APPLEは、これから続く“フェーズ2”をどう彩り、どんな姿で、どんな景色をみせてくれるのだろうか。楽しみで仕方ない。
Text by Maiko Murata
Photos by 上飯坂一
◎公演情報
【Mrs. GREEN APPLE ARENA SHOW “Utopia”】
2022年7月8日(金) 神奈川・ぴあアリーナMM
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