Billboard JAPAN


NEWS

2022/06/19

<ライブレポート>SARUKANI、快進撃を予感させる“スーパーツアーファイナル”公演を開催

 SO-SO、RUSY、KAJI、Koheyから成るヒューマンビートボックスクルー・SARUKANI。結成2周年を迎えた彼らの初のジャパンツアーが6月7日、恵比寿LIQUIDROOM公演で幕を閉じた。東京、大阪、北海道の3都市をまわったツアー【BKPK 2022】の追加公演として開催された同公演のタイトルは【BKPK 2022; STRONG EDITION】で、メンバーの言葉を借りれば“スーパーツアーファイナル”とのこと。先の3公演を経てさらにブラッシュアップされたパフォーマンスが堪能できたほか、セットリストの変更などもあり、この日ならではの内容が展開された。

 なお、この日は、YouTuberとしても活躍するアーティスト・OdAkEiがオープニングアクトとして出演。人生初ライブだったというOdAkEiは「いやー、めちゃくちゃ人が多い!」と満杯のフロアに驚いていた。出番前に緊張したとも言っていたが、まず自分自身が楽しもうという前のめりなバイブスが伝わってきた。3曲目の「I Don't Care」では覆面ラッパーのTEMBAが登場。さらにCarlo Redlも登場し、3人で「WAVES」を披露するなど、レーベルメイトとのコラボも織り交ぜながら、フレッシュかつエネルギッシュなパフォーマンスでフロアを温めた。その盛り上がり様は、後にSARUKANIメンバーが「既に仕上がってて、“やりやすっ!”と思った」と言っていたほど。

 さて、SARUKANIの出番になると、SO-SO、RUSY、KAJI、Koheyがロボットのようなジェスチャーをしながらステージに現れた。4人から発せられるロボットの動作音を思わせる効果音が、やがてビートへと変わっていく。そんなサイバーパンク的なオープニングとともにパフォーマンスが始まったのだった。一番に感じたのは、重低音の鳴りの良さだ。ずんと腰にくるベースやバスドラの響きが人の体内から出てきているものとはにわかに信じがたいし、その真価は生のライブ空間だからこそ体験できるものと言えよう。全ての音を人力で鳴らしているからこそ生じるリズムのヨレやグルーブを楽しみながらフックへと変えていく4人のパフォーマンスに、フロアの観客も思い思いに揺れている。楽曲の構成としても、ビルドアップやドロップを有したダンスミュージック的なものが多く、最高に踊れる。

 この日のLIQUIDROOMには、SARUKANIがきっかけでヒューマンビートボックスに興味を持ち始めた人や、ヒューマンビートボックスのライブに初めて来た人も多くいたことだろう。そんななか、彼らは、国内外の大会で好成績を残しているその実力で以って、エンターテイメント性の高い、誰にでも開かれたライブを展開。観客とともに振り付けを楽しんだ「ULTRA POWER」を筆頭に、ジェスチャーや海の音やサイレンの音などの効果音的なビートボックスサウンドから楽曲のシチュエーションが明確に伝わってきた「Submarine」や「SIREN FIGHT」など、音楽の面白さを分かりやすく伝えようとする場面が目立った。先攻の人が鳴らした音を後攻の人が真似るバトル形式の“ビートボックスゲーム”もユーモアを交えながら行われる。

 また、途中には、ループステーションを用いたその場でレコーディングした音を重ねていくパフォーマンスや、ソロやタッグでのパフォーマンスを披露するセクションも。それらは一人ひとりの個性や組み合わせごとの特徴がダイレクトに感じられるという意味で非常に有意義なセクションだったが、再び4人に戻った時の音の分厚さ、異なる個性が掛け合わさって増幅する瞬間に生まれる迫力に、SARUKANIがSARUKANIである所以があるようにも感じた。そういう意味では、この日のアンコールで初めて披露された新曲で、OdAkEiとのコラボ曲「9 Lives」から垣間見えた新たなケミストリーにも触れておきたい。“A cat has nine lives”(猫は9回生まれ変わる)という逸話がモチーフになったダークなアッパーチューンは、曲中にガラッと色を変える場面もあり、自由でジャンルレスな印象を受ける。また、OdAkEiがレコーディング中に発した猫の鳴き声のような声が採用され、このような楽曲になったのだというエピソードからも自由な遊び心を感じた。

 その後、OdAkEi vs KAJI&Koheyでビートボックスゲームをしたり、その結果OdAkEiが勝利し、「あなた世界レベル……?」(SO-SO)、「威厳を保てなかった(笑)」(Kohey)、Koheyの誕生日をみんなで祝ったり……といったアットホームな場面を経て、デビュー曲の「SARUKANI WARS」で終了。この日は世界大会でのパフォーマンスを交えたスペシャルバージョンでラストを飾った。ビートボクサーとしての確かな実力を武器にJ-POPシーンに切り込むSARUKANIの快進撃を予感させる一夜だった。

Text by 蜂須賀ちなみ
Photo by Leo Kosaka


◎公演情報
【BKPK 2022; STRONG EDITION】
2022年6月7日(火)
東京・LIQUIDROOM
OPENING GUEST:OdAkEi

SARUKANI その他の画像・最新情報へ

ACCESS RANKING

アクセスランキング

  1. 1

    <インタビュー>YUTA(NCT) ミニアルバム『Depth』に込めたソロアーティストとしての挑戦――「たくさんの経験があったから今がある」

  2. 2

    和楽器バンド、活休前最後のツアーが開幕 10年分の感謝をこめた渾身のステージ

  3. 3

    櫻坂46、躍進した2024年の集大成を魅せたグループ4周年ライブでZOZOマリン史上最大となる72,000人を動員

  4. 4

    JO1、ワールドツアー開催を発表「ここから世界に羽ばたいていきます」

  5. 5

    <インタビュー>米津玄師 新曲「Azalea」で向き合った、恋愛における“距離”――「愛情」の源にある“剥き身の生”とは

HOT IMAGES

注目の画像