2022/05/16
ジャニーズWESTが2022年5月14日、『OSAKA METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2022』に出演。「METROCK大阪特設会場(大阪府堺市・海とのふれあい広場)」内のメインステージ“BAY FIELD”の4組目のアーティストとして、15時30分から約50分に渡る熱いステージを繰り広げた。
多くの人のジャニーズWESTの認識は、“大阪のパワーを持った、底抜けに明るいアイドルグループ”だろう。ただ、それと同じくらい7人を生かしているのが、彼らに宿ったロックなスピリットだ。だから、太陽のもとで歌うロックフェスがよく似合う。「いつかフェスに出たい」と口にしていたジャニーズWESTが、音楽フェスに初めてラインナップされたのは『METROCK2021』だった。しかし、新型コロナウィルス拡大の影響で敢えなく中止。幻となりかけた夢は、『METROCK2022』大阪公演でかなうことになった。
出番は5月14日、15時30分。BAY FIELDのステージ前には、開演時間前から多くのオーディエンスが集まっていた。せっかくなら見てみようかと、ノリや興味本位でステージ前にやってきた音楽ファンも多い。大阪という地元でありながら、ロックの祭典というある種、アウェイな場所。挑戦者の覚悟を持った7人が会場のクラップに迎えられ、ステージに駆け込んできた。
重岡大毅の「やっちゃうぜー」という叫びで、アクトの始まりを告げた。オープニングは、グループの大事な場面で1曲目として歌ってきたデビュー曲『ええじゃないか』。軽やかにイントロで体を揺らした次の瞬間、メトロック初歌いの出だしから、重岡が「ひとつひとまずメトロック」と即興の替え歌にすると、すかさずメンバーが「メトロック」と合いの手を入れ、続く中間淳太、小瀧望も歌詞を“メトロック”に変えてのっかる。出番直後にして、初見のオーディエンスまで笑顔にしてしまった。たった1曲の間に、客席は彼らの振りをマネて踊る人の輪が広がっていった。
その勢いのまま、『ズンドコ パラダイス』へ。ポップなサウンドに関西弁と、演歌的なメロディを散りばめた楽曲で存在感を示すのが、パワフルな歌声と伸びやかなヴィブラートを持つ桐山照史だ。7人それぞれが個性のある歌声を持っているのは、ジャニーズWESTの一つの武器。かつ、一人ひとりが楽曲ごと、ときにフレーズごとに声色を変える。だから、7人7色では収まらないのだ。
3曲目からは、その歌声や音楽性の幅広さを見せつけた。濵田崇裕が「手を挙げてください。次の曲はジャニーズWESTを知ってる人も知らない人も、超簡単に楽しむことができます。上げた手をタテに振れますね」と動きをレクチャー。小瀧の「What‘s up What‘s up!」というあおりで、最新アルバム『Mixed Juice』の収録曲、『Anything Goes』が始まった。少し年代をさかのぼったようなパワフルなヒップホップに、今っぽいサウンドを混ぜ込んだ楽曲。ここでは言葉の詰まった難易度の高い神山のラップや、藤井のクールな乾いた低音が引き立つ。7人がリズムを刻みながら細かく歌いつなぎ、グルーヴ感を増していく。それに呼応するように、心地よいタテノリを全身で楽しむオーディエンス。そこにはもう、一片のアウェイ感も見当たらなかった。
続く『Big Shot!!』は疾走感あふれるメロディに、前向きな歌詞がのったアッパーチューン。かつ、この曲ではアイドルらしく激しいダンスも見せる。その振り幅の広さに、観客はいい意味で困惑させられたのではないだろうか。ガシガシと踊った直後、濵田と神山がボコーダーのかかったハイトーンを響かせるのだが、それをさらりとやってのけるところにアイドルの力を垣間見た気がした。フレーズごとに演じるように歌いわける濵田の表現力は、メンバーの信頼も厚い。その濵田のフェイクで始まるのが、『Mixed Juice』。きらびやかなホーンが利いた、にぎやかなナンバーでサビのキャッチ―なメロディもクセになる。藤井が1オクターブほどの間を行き来しながら、フェイクを聞かせるパートも見せどころ。ドライな低音とは違うウェットな歌声で、会場を魅力した。
次に披露した『サムシング・ニュー』は、あいみょんがウェディングをテーマに書き下ろした人生賛歌。サビ始まりの重岡ののびやかな歌声が広がり、小瀧の穏やかな歌声、優しく甘い中間の甘い声へと移り変わっていく。あいみょんらしい節回しとジャニーズWESTの芯の強さ、「さあ、進もうよ 姫」の歌詞からにじみ出る絶妙なアイドル感が心地よくミックスされた楽曲で、会場に幸せな空気を運んだ。
ここで、「うちの重岡くんが作ってくれた曲」と桐山が紹介し、「いい曲なんですよ」と誇らしげな表情を見せる。そして、重岡のやさしいピアノのイントロで、『間違っちゃいない。』が始まった。静かに耳を傾ける観客を、冒頭の艶っぽく表情のある小瀧の歌声が一気に惹きつけ、神山がエレキギター、濵田がアコースティックギターを持って演奏に加わる。7人は主旋律とコーラス、フェイクを入れ替わりながら歌い上げて温かい空間を作った。重岡がたまらずメンバーに、「忘れんとこーぜ、この景色」とつぶやく姿もエモーショナルだった。
アクトは後半戦へ。小瀧が「みんなが誰を好きで、誰のファンでここに来たか、ぶっちゃけどうでもいいです。この瞬間だけは、僕たちと一つになって盛り上がっていきましょう!」と呼びかけると、さらに会場の熱が上がる。続く『アンジョーヤリーナ』は、バンドサウンドがハマる8ビートのストレートなロックだ。そもそもジャニーズWESTが生バンドで初めて歌ったのは、シングル『証拠』のSpecial Studio Recording。「あの瞬間の感動と衝撃を7人で味わえたことが大きかった」と彼らは今も口にする。その後、2020年のコロナ禍に行われた配信ライブから、バンドを背負ったコーナーをライブに組み込み、今ではライブの大きな柱の一つになっている。結果的に、バンドで歌うことが意識と表現力を高め、グループの新たな魅力を引き出したのだ。
そして、サンボマスター山口隆から楽曲提供を受けた『週刊うまくいく曜日』へ。「飛ぶぞー!」とオーディエンスを巻き込み、ピースを掲げて歌うサビでは何とも言えないラブ&ピースな空気がただよう。7人は気持ちが抑えきれず、ステージの前っつらギリギリまで行き、一番後ろまで届けとばかりに歌う。続く『僕らの理由』はジャニーズWESTが持つ熱や優しさが、これでもかというほどあふれ出た曲。「あなたに歌ってるから!」と桐山が会場に叫び、メンバー1人ひとりが、会場の1人ひとりに語り掛けるように歌う。聞いた人の存在をこれほどまでに、真っすぐ全肯定してくれる曲はなかなかないだろう。落ちサビの歌詞に共感し「なぁ?」「そうだろ?」と優しく語り掛ける重岡の熱い言葉は、きっと観客の心を揺さぶったに違いない。さらに重岡が作詞・作曲したナンバーをもう1曲。『ムーンライト』もまた熱量高く、野外を突き抜けていくようなロックなナンバーだ。曲中には中間がクラップを呼びかけ、藤井はタオルを振り回して盛り上げる。さらに神山がメンバーを呼び寄せ、7人で音に合わせ足をタタタタと鳴らす姿は、なんとも微笑ましい光景だった。
最後の曲の前。「音楽って心救われると思うんすよ。ジャニーズWESTってアイドルですけど、俺たちアイドルに胸張って生きてます!」と神山が熱く話し、またこのステージに戻ってくることを誓った。そして、人差し指と小指を立てる“メロイックサイン”を会場中で掲げ、始まった『証拠』。彼らが第二のデビュー曲というほど、大事にしている楽曲を最後の力を振り絞り、拳を突き上げて全力で届ける。すべてを歌い終えると、7人はすがすがしい表情を見せた。
汗まみれで、顔をくしゃくしゃにして歌うアイドルに、音楽ファンたちは心を揺さぶられ、熱狂させられたはずだ。以前、重岡がこんなことを言っていた。「ギターが似合うギタリストがおるように、マイクという楽器が似合うボーカリストになることもできんねやな」と。まさに、METROCKのステージに立つ7人は誇りを持ったアイドルであると同時に、7人のボーカリストがフロントに立つロックバンドのようだった。
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