Billboard JAPAN


NEWS

2022/05/10

<ライブレポート>flumpool×sumika、ミュージシャンとしての矜持を讃え合った対バンライブ

 flumpoolとsumikaによる対バンライブ【flumpool Special 対バン Tour 2022「Layered Music」】が、2022年5月7日、神奈川・神奈川県民ホール 大ホールにて開催され、両バンドが満員のファンと最高に幸せな時間を共有した。

 このツアーは、2021年より新たな体制で活動を始めたflumpoolがバンドとして更なる高みを目指して企画し、愛知、神奈川、東京、大阪の全国4か所で開催されるもの。GW中には3日連続で公演が行われており、5月5日に名古屋国際会議場 センチュリーホールにてスガ シカオ、5月6日に神奈川県民ホール 大ホールにてSaucy Dogとの対バンを経て、この日はsumikaを迎えてのライブとなった。

 満員の観客で埋め尽くされた場内が暗転すると、ファンタジックなSEからカラフルな照明がステージを照らし出し、大きな拍手に迎えられてsumikaが登場。メンバーの4人、片岡健太(Vo&Gt)、荒井智之(Dr&Cho)、黒田隼之介(Gt&Cho)、小川貴之(Key&Cho)、ゲストメンバーの三浦太郎(Gt&Cho/フレンズ)、George(Key/MOP of HEAD)、真船勝博(Ba/ FLOWER FLOWER)による7人編成だ。

 「俺たちを選んでくれたflumpoolと、今日を探し出してくれたあなたに愛情をこめて。トップバッター、sumika始めます」との片岡の第一声から、「イコール」でライブがスタートすると、総立ちの客席から一斉に手拍子が起こって早くも一体感が生まれた。全力でこの日を楽しもうというオーディエンスの熱量が最初からものすごい。「めちゃくちゃ楽しみにしてきました! あなたのご機嫌はいかがですか!?」と片岡が呼び掛けて始まったのは、「Flower」。オリエンタルなギターリフに乗せた早口なボーカル、アッパーな演奏で一気に盛り上がる。曲間では片岡が思わず「楽しいー!」と自然に声を発している様子だった。

 次々と曲を畳みかけたのち最初のMCでは、パチパチパチ~とあまりの大きく気持ち良い拍手の音に「美味しそうな天ぷらを揚げているような音(笑)」と呟いていた。実はこのライブではflumpoolにセッションを誘われたものの、久しぶりのflumpoolのライブを観てもらった方が良いと考え、お互いの持ち時間でそれぞれのライブを見せることにしたという。そして、MCの直後に歌われたのは、flumpool「星に願いを」。後にflumpoolのライブの際にMCで明かされたが、セットリストには「新曲」と書いてあり、完全にサプライズで披露された楽曲だった。心憎い演出で、観客だけじゃなくflumpoolの心も掴んでみせたようだ。

 「ふっかつのじゅもん」で片岡、黒田がステージ前で煽り、カオスに包まれた会場の盛り上がりは最高潮に。キメが多く高い演奏力も満喫できた。その後に続く2曲が、実にインパクトのあるセクションだった。まず「Babel」で真っ赤な照明を浴びて、片岡がGeorgeと2人だけでステージに残って打ち込みをバックにしたパフォーマンスを見せる。会場は先ほどまでとまるで違うムードに一変。枠に囚われない自由な精神による表現方法は、それまでノッていたオーディエンスを突き放すような快感があり、爽快ですらあった。

 メンバーがステージに戻ってからの「Strawberry Fields」は荒井がブラシでプレイ、真船はアップライトベースを弾くジャジーな一曲。プレイヤーのソロも回して、各々の実力、ミュージシャンシップが発揮された。メロウな鍵盤からアカペラの歌い出し、片岡、黒田、小川、三浦によるハーモニーを聴かせてから始まったミディアムのR&B「Summer Vacation」の緩やかなバイブスも最高にクールだった。

 MCでは、対バンに誘ってもらったことへの感謝を伝えた片岡。山村隆太も片岡自身も共通して声が出なくなった経験があり、その辛さと支えてくれる人のありがたさを知っている。「同じような気持ちで歩んでいけるバンドって本当に少ないと思うから、この縁だけは逃したくないと思って、音楽だけじゃなくて人として、今日は対バンしたいと思いました」と気持ちを吐露した。さらに、「どれだけ良いCD、レコードを作っても、スピーカーが壊れていたら音は悪いはず。どれだけ良い曲を作っても、人間性が伴っていなければ音は全然響かないです。flumpoolは良い曲を作っているだけじゃなくて、人間として心に響くから、今日絶対一緒にやりたいと思いました」との言葉を真っすぐに伝えると、ラストは「ファンファーレ」「Shake & Shake」でステージを駆け回り、最高に真摯でハッピーなライブを見せてステージを後にした。

 転換後、flumpoolの山村隆太(Vo)、阪井一生(Gt)、尼川元気(Ba)、小倉誠司(Dr)とサポートメンバーの村原康介(Key)がステージに上がる。それぞれの楽器が重なり合いながら期待感を高めつつ始まり、バンドの音がひとつの塊となって迫力の音圧で迫る、どっしりとした貫禄あるオープニングだ。山村による「素晴らしいバトンをもらったので、最後までみんなでひとつになりましょう!」との呼び掛けに、右手をステージに掲げて応えるオーディエンス。途切れることのない熱気で会場中の温度がどんどん上がっているように感じる。アッパーなダンスチューンで踊らせつつ、緩急織り交ぜながら進んでいくステージ構成に合わせて色とりどりのライトが客席を飛び交うなど、大きなホールコンサートならではのスケールの大きな演出も際立っていた。

 「今日は待望の一日です! 集まってくれてありがとうございます」と改めて挨拶した山村は、sumikaとの“馴れ初め”について、「sumikaさんには結構、片思いしてたんですよ。年も近いし声を壊したことをお互い乗り越えたこともあって、友だちになりたいと思っていて。大阪のフェスにsumikaさんが出てたときに、ケータリングで遠目に見ながら『行こうかな』って思っていたんですけど、そのときは声を掛けられなかった」と告白。その後、FM802の知り合いに繋いでもらい片岡にラジオのゲストに来てもらったことで面識ができ、2021年のsumikaのライブを観たその日の夜に、勇気を振り絞って片岡に電話をしたことで、対バンに至ったそうだ。

 イントロから大きな手拍手が起こり、「花になれ」が始まった。ストレートな8ビートが場内の空気を震わせる。真っすぐで澄んだ歌声は儚いようでいて、優しく包み込むような強さも感じられるもの。続いてキラキラした鍵盤の音色と柔らかなコーラスに導かれてミディアムテンポの「A Spring Breath」へ。ピアノを中心としたシンプルなアレンジにより、メロディの良さがより鮮明に伝わってきた。

 中盤のMCでは、阪井の妹がsumikaの大ファンであることから、この日も観に来ていることが明かされた。「俺らのライブなんて来ないのに(笑)。わざわざ東京まで来て観に来ることなんて今までなかったのに」との阪井の自虐的なコメントに会場から笑いが起こる。さらに阪井一家は全員sumikaファンとのことで、ステージ上からマイクを通して「サインくれません?」とsumikaに呼び掛ける一幕もあり、両バンドの良い関係が伺えた。

 まだライブでやったことがないという新曲「その次に」が紹介され、山村が長いMCへ。「僕らは去年、13年ぐらいお世話になった事務所から独立して、4人だけで会社を立ち上げました。そのときに、『次に行くぞ』という気持ちで書いた曲です。踏み出すことにはすごく不安があったんです。でも、10年後20年後、たとえ後悔したとしても、この4人で進もうとしたその気持ちは間違いじゃないと思って進みだしたんです。仲間といれば心強いこともあるけど、人と何かやろうとすると、価値観がぶつかったり面倒くさいと思ったりすることもあるじゃないですか? 遠い国では、価値観がぶつかり合って戦争が起こっているところもあります。でもやっぱり、僕らflumpool 、そしてsumikaが伝えたいのは、人と人がぶつかること、一緒にいることは決して悲しいことだけじゃない、恐れることじゃないということ。その想いを伝えたくて、僕らは音楽をやっています。そんな気持ちで歌います」と、改めて「その次に」が披露された。パワフルなリズムが決意の強さを感じさせる曲で、サビで大きく広がっていくサウンドスケープとシンフォニックなシンセのフレーズがこれから続いて行く物語を感じさせた。

 ライブは後半へ。「まだまだいけますかー!? ひとつになってもいいじゃない!」と山村が叫び、タオルを片手に煽ると、タテノリのリズムに飛び跳ねながら客席は一面タオルがグルグルと回る壮観な景色に。会場中がグルーヴの渦に巻き込まれたものすごい盛り上がりとなった。エンディングでは、sumikaのメンバーを呼び込んで、観客との記念撮影を実施。また、ステージ上で阪井が妹のためにsumikaに本当にサインをしてもらうというレアなシーンもあり、最後まで心温まるムードで終了となった。ライブの激しさやユーモア溢れるトークの中にも、flumpool、sumikaそれぞれのメンバーの人間性、ミュージシャンとしての矜持を感じることができた素晴らしい対バンライブだった。

 【flumpool Special 対バン Tour 2022「Layered Music」】は今後、6月11日、12日にTOKYO DOME CITY HALLにて高橋優、6月18日、19日に大阪府オリックス劇場にてフレデリックとの公演がそれぞれ開催される。


Text:岡本貴之
Photo:後藤壮太郎(sumika)/関口佳代(flumpool、集合写真)

 

◎公演情報
【flumpool Special 対バン Tour 2022「Layered Music」】
2022年5月7日(土)神奈川・神奈川県民ホール 大ホール
出演:flumpool / sumika
〈sumika セットリスト〉
1.イコール
2. Flower
3. フィクション
4. 1.2.3..4.5.6
5. グライダースライダー
6. 星に願いを(flumpoolカバー)
7. ふっかつのじゅもん
8. Babel
9. Strawberry Fields
10. Summer Vacation
11. 願い
12. ファンファーレ
13. Shake & Shake

flumpool その他の画像・最新情報へ

関連商品

Real
flumpool「Real」

2020/05/20

[CD]

¥5,500(税込)

素晴らしき嘘
flumpool「素晴らしき嘘」

2020/02/26

[CD]

¥1,430(税込)

素晴らしき嘘
flumpool「素晴らしき嘘」

2020/02/26

[CD]

¥2,530(税込)

HELP
flumpool「HELP」

2019/05/22

[CD]

¥1,320(税込)

HELP
flumpool「HELP」

2019/05/22

[CD]

¥2,200(税込)

とうとい
flumpool「とうとい」

2017/12/26

[CD]

¥1,320(税込)

とうとい
flumpool「とうとい」

2017/12/26

[CD]

¥2,200(税込)

ラストコール
flumpool「ラストコール」

2017/03/15

[CD]

¥1,320(税込)

ラストコール
flumpool「ラストコール」

2017/03/15

[CD]

¥2,200(税込)

FREE YOUR MIND
flumpool「FREE YOUR MIND」

2016/11/02

[CD]

¥1,320(税込)

FREE YOUR MIND
flumpool「FREE YOUR MIND」

2016/11/02

[CD]

¥2,200(税込)

EGG
flumpool「EGG」

2016/03/16

[CD]

¥3,080(税込)

Answer
flumpool「Answer」

2012/11/07

[CD]

¥1,320(税込)

Answer
flumpool「Answer」

2012/11/07

[CD]

¥1,320(税込)

Answer
flumpool「Answer」

2012/11/07

[CD]

¥1,760(税込)

Because... I am
flumpool「Because... I am」

2012/07/11

[CD]

¥1,320(税込)

Because... I am
flumpool「Because... I am」

2012/07/11

[CD]

¥1,760(税込)

Present
flumpool「Present」

2011/12/07

[CD]

¥1,320(税込)

Present
flumpool「Present」

2011/12/07

[CD]

¥1,760(税込)

flumpool「証」

2011/09/07

[CD]

¥1,320(税込)

flumpool「証」

2011/09/07

[CD]

¥1,760(税込)

星に願いを
flumpool「星に願いを」

2009/02/25

[CD]

¥1,320(税込)

星に願いを
flumpool「星に願いを」

2009/02/25

[CD]

¥1,540(税込)

星に願いを
flumpool「星に願いを」

2009/02/25

[CD]

¥1,540(税込)

Unreal
flumpool「Unreal」

2008/11/19

[CD]

¥1,980(税込)

ディスタンス
flumpool「ディスタンス」

2021/05/26

[CD]

¥1,430(税込)

ディスタンス
flumpool「ディスタンス」

2021/05/26

[CD]

¥2,200(税込)

Real
flumpool「Real」

2020/05/20

[CD]

¥3,300(税込)

Real
flumpool「Real」

2020/05/20

[CD]

¥5,500(税込)

素晴らしき嘘
flumpool「素晴らしき嘘」

2020/02/26

[CD]

¥1,430(税込)

素晴らしき嘘
flumpool「素晴らしき嘘」

2020/02/26

[CD]

¥2,530(税込)

HELP
flumpool「HELP」

2019/05/22

[CD]

¥1,320(税込)

HELP
flumpool「HELP」

2019/05/22

[CD]

¥2,200(税込)

とうとい
flumpool「とうとい」

2017/12/26

[CD]

¥1,320(税込)

とうとい
flumpool「とうとい」

2017/12/26

[CD]

¥2,200(税込)

ラストコール
flumpool「ラストコール」

2017/03/15

[CD]

¥1,320(税込)

ラストコール
flumpool「ラストコール」

2017/03/15

[CD]

¥2,200(税込)

FREE YOUR MIND
flumpool「FREE YOUR MIND」

2016/11/02

[CD]

¥1,320(税込)

FREE YOUR MIND
flumpool「FREE YOUR MIND」

2016/11/02

[CD]

¥2,200(税込)

EGG
flumpool「EGG」

2016/03/16

[CD]

¥3,080(税込)

EGG
flumpool「EGG」

2016/03/16

[CD]

¥4,180(税込)

夜は眠れるかい?
flumpool「夜は眠れるかい?」

2016/02/10

[CD]

¥1,320(税込)

夜は眠れるかい?
flumpool「夜は眠れるかい?」

2016/02/10

[CD]

¥1,870(税込)

FOUR ROOMS
flumpool「FOUR ROOMS」

2015/05/13

[CD]

¥1,320(税込)

FOUR ROOMS
flumpool「FOUR ROOMS」

2015/05/13

[CD]

¥1,870(税込)

Answer
flumpool「Answer」

2012/11/07

[CD]

¥1,320(税込)

Answer
flumpool「Answer」

2012/11/07

[CD]

¥1,320(税込)

Answer
flumpool「Answer」

2012/11/07

[CD]

¥1,760(税込)

Because... I am
flumpool「Because... I am」

2012/07/11

[CD]

¥1,320(税込)

Because... I am
flumpool「Because... I am」

2012/07/11

[CD]

¥1,760(税込)

Present
flumpool「Present」

2011/12/07

[CD]

¥1,320(税込)

Present
flumpool「Present」

2011/12/07

[CD]

¥1,760(税込)

flumpool「証」

2011/09/07

[CD]

¥1,320(税込)

flumpool「証」

2011/09/07

[CD]

¥1,760(税込)

君に届け
flumpool「君に届け」

2010/09/29

[CD]

¥1,320(税込)

君に届け
flumpool「君に届け」

2010/09/29

[CD]

¥1,760(税込)

残像
flumpool「残像」

2010/02/03

[CD]

¥1,320(税込)

星に願いを
flumpool「星に願いを」

2009/02/25

[CD]

¥1,540(税込)

星に願いを
flumpool「星に願いを」

2009/02/25

[CD]

¥1,540(税込)

Unreal
flumpool「Unreal」

2008/11/19

[CD]

¥1,980(税込)

ACCESS RANKING

アクセスランキング

  1. 1

    櫻坂46、躍進した2024年の集大成を魅せたグループ4周年ライブでZOZOマリン史上最大となる72,000人を動員

  2. 2

    JO1、ワールドツアー開催を発表「ここから世界に羽ばたいていきます」

  3. 3

    和楽器バンド、活休前最後のツアーが開幕 10年分の感謝をこめた渾身のステージ

  4. 4

    <インタビュー>YUTA(NCT) ミニアルバム『Depth』に込めたソロアーティストとしての挑戦――「たくさんの経験があったから今がある」

  5. 5

    【米ビルボード・アルバム・チャート】ATEEZ『GOLDEN HOUR : Part.2』首位、リンキン・パーク/JINがTOP5デビュー

HOT IMAGES

注目の画像