カニエ・ウェスト改めイェーが、最新スタジオ・アルバム『Donda 2』の一部を2022年2月22日に米マイアミのLoanDepot Parkで開催された一夜限りのリスニング・イベントで公開した。

　全米の一部のIMAXシアターと、カニエのStem Playerのウェブサイトで同時中継されたこのコンサートでは、音楽、アート、ファッションの組み合わせに加え、ジャック・ハーロウ、ミーゴス、アリシア・キーズ、マリリン・マンソンといったスペシャル・ゲストが登場した。

　約2時間のイベントでカニエは、「Eazy」や「Pablo」などのファンに人気のある曲を披露しながら、新曲「City of Gods」なども披露したが、そのほとんどが別居中の妻キム・カーダシアンとのけんかにスポットを当てたものだった。例えば、「Sci-Fi」は、2021年に放送された米人気番組『サタデー・ナイト・ライブ』にキムが出演した時のモノローグの一部をサンプリングしており、「私は史上最高のラッパーと結婚しました。それだけでなく、彼はアメリカで最も裕福な黒人男性です。才能がある真の天才で、私に4人の素晴らしい子どたちを授けてくれました」と彼女は語っていた。

　未発表曲に収録されている「冷蔵庫から家族写真を絶対に外すな/男と彼の子どもたちの間に立ちはだかるな/どれだけ警備しようとも足りないぞ」などの歌詞で、カニエは自身の家庭環境について明かしている。

　以下、米ビルボードが会場で目撃した、生配信では見られなかったであろう5つのポイントを紹介する。

◎演出
　沼地に建つ廃墟の教会を舞台にしたセットは、シンプルかつパワフルなものだった。ステージの周りには約10台のバイクと、20人以上のパフォーマーが黒装束を身にまとい、開演約1時間前から所定の位置に着いていた。約2時間のステージでは、薄暗い照明と霧がステージを満たし、人数が増えたパフォーマーたちが火のついた家の中を歩き回っていた。

◎待機中のウェーブ
　期待されていた2月22日0時にアルバムが解禁されることはなかった上、イベントも予定されていた開始時刻を大幅に過ぎてからスタートした。現地時間の午後8時に予定されていた開演は、午後10時45分まで押した。Twitterではカニエが“キューバ時間で動いている”とジョークを飛ばすユーザーもいたが、現地の観客は大規模アリーナでありがちなウェーブをしながら退屈凌ぎをしていた。

◎YEEZYパーティーの様相
　ファッションといえば、ほとんどがZ世代と思われるカニエのファンたちは、このイベントに全力で臨んでいた。全身黒の服を着ている人、デザイナーズ・ブランドの服を着ている人、お気に入りのYEEZYシューズを履いている人、スタッズ付きのフェイス・カバーをかぶっている人などが目立っていた。このイベントでは、カニエ・ブランドのスライドやフォーム・サンダルが販売されたほか、バレンシアガがデザインした限定パーカーやTシャツのグッズも販売されていた。

◎豪華な来場者たち
　VIPとメディアのための受付では、開場直後からフレンチ・モンタナとその一行が列を作っていた。ほかにも、ビジネス界の大物イーロン・マスク、ラッパーでありプロデューサーでもあるディディ（ショーン・コムズ）、ブラジルのスターであるアニッタ、アルゼンチンの新人ティアゴPZKなども参加していた。イベント終了後には、駐車場で小さな観衆に囲まれて盛り上がっていたDJキャレドの姿も目撃された。

◎かろうじて見えたスペシャル・パフォーマンス
　この夜の本当のハイライトは、カニエと共演したスペシャル・ゲストの面々だった。ミーゴスのクエイヴォとオフセットは、カニエと『Donda 2』の「Kid We Did It」をパフォーマンスし、ジャック・ハーロウは「Louis Bags」、プシャ・Tは「Diet Coke」の際に登場した。セットの家が分かれたあとのイベント後半では、前作『Donda』のイベントでもカニエをサポートしたショック・ロッカーのマリリン・マンソンとダベイビーが登場して一緒に「Jail」を披露、その後アリシア・キーズとファイヴィオ・フォーリンと一緒に「City of Gods」を披露した。

　これらの様子は、IMAX上映会場やStemで自宅からは観ることができたが、LoanDepot Parkに集まったファンからはステージがほとんど見えず、どのアーティストがカニエと共演しているのか分からなかっただろう。カニエの美学に忠実に、照明は最小限に抑えられ、大部分が暗かった。だがアリシアがピアノを弾きながら「City of Gods」の歌詞を口ずさむと、観客は特に盛り上がっていた。会場の音響が悪かったにもかかわらず、彼女のパワフルな歌声がクリアに聞こえていたからだ。