2022/02/21 12:00
ここ1か月くらい、Saucy Dogの「シンデレラボーイ」が面白い動きをしている(【表1】)。この曲は、昨年8月25日にリリースされたミニ・アルバム『レイジーサンデー』の収録曲で、本作のリード・トラック扱いだ。ただし、リリース・タイミングでのチャート・アクションを見てみると、Billboard JAPAN 総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100”の2021年9月8日公開分では、ラジオのオンエア回数腕ポイントを稼いで97位にチャートインしたものの、その前後は圏外。通常であればこれで終了し、新曲へとシフトしていくだろう。
しかし、「シンデレラボーイ」は違っていた。コミック仕立てのミュージック・ビデオがじわじわと話題になり、YouTuberがカヴァー動画を続々と公開し、TikTokなどのSNSでも頻繁に使われるようになったことがカウンター・パンチのように効き、動画再生数とストリーミングでポイントを伸ばす。10月20日公開分の“JAPAN HOT 100”で86位に再浮上したのを皮切りに、11月3日公開分で一気に43位まで上昇。その後時間をかけて右肩上がりとなり、12月以降は30位前後を横ばいしながら推移している。
こういった状況を後押ししたのが、2022年1月21日に出演した音楽番組『ミュージックステーション』だ。番組オンエア後の1月26日公開分で18位に急上昇し、翌週2月2日公開分で8位とトップ10入りを果たす。最新の2月16日公開分では11位と惜しくも10位以内からは漏れたが、これら一連の動きによってますますSNS上で活性化。この勢いはしばらく止まりそうにない。
ここでのポイントは、やはりテレビ出演のタイミングだろう。初っ端からドカンと露出するのもインパクトがあっていいかもしれないが、「シンデレラボーイ」はじっくりとヒットの下地を育んできた中での地上波露出ということが引き金になったといえる。当然、楽曲が持つ力があったからこそだし、話題になるMVの完成度も高さも無視できない。そして何より、Saucy Dog自体に追い風が吹いており、ライブの集客力でいえばアリーナ・クラスを埋められる実力をすでに持っていただけに、あとはヒット曲を待つばかりという状況だったことも大きい。
メディアが多様化し、テレビの影響力が危ぶまれているとはいえ、やはり地上波のテレビ番組の効果は大きい。そして、その効力を最大限活かせるタイミングで出演し、ロングヒットへと結びつけたSaucy Dogは見事だ。ワンステップ積み重ねた彼らの今後に期待したい。
Text:栗本斉
◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
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