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2022/02/21

「脱アル中集会での出会いが誕生のきっかけ」シーア初監督映画インタビュー到着

 2月25日に公開を控える映画『ライフ・ウィズ・ミュージック』にて、初監督を務めたシーアのオフィシャルインタビューが到着した。先日紹介した本作に込めた想いに続き、アルコール依存症のリハビリで出会った自閉症の男の子が“ミュージック”のモデルになったこと、そして本作で何を伝えたかったのか等々、シーア自身が率直に語っている。


Q:この映画はとてもパワフルで、感動的で、ユニークなもので、この映画のおかげで音楽がさらに好きになりました。そもそもこの作品を作ろうと思った理由とその始まりについて教えてください。

シーア:運命だったから、かしら。これは、撮影中にずっとそう言っていたと思う。
きっかけはちょっとしたことで、マディー・ジーグラー(以下、マディ)が演じたミュージックというキャラクターは、脱アル中集会で出会った自閉症の男の子がモデルになっているの。その子の母親がその集会の手話担当者でね、ベビーシッターを雇う余裕もないから日曜の朝に彼を仕事場に連れてきてたわけ。それでその自閉症の子と知り合ったんだけど、ある日母親がこう言ったの、「私がいなくなったら、誰がこの子を愛してくれるのかしら?」って。その一言から閃いて、『ライフ・ウィズ・ミュージック』が生まれたのよ。
撮影の前にスタッフ全員に言ったわ。「毎日撮影現場に来るときに思い出してほしい。私たちがここにいるのは、自閉症のコミュニティや、介護者を大切にし、自閉症スペクトラムの人々や映画に登場するすべての人々を大切にしているからだと」って。

最初、ソーシャルメディアからキャストの皆さんを選んで起用したという感じだった。随分前に<シャンデリア>という曲のミュージックビデオを撮った時にマディをキャスティングして、その後にレスリー・オドム・Jr.(以下、レスリー)のミュージカル『ハミルトン』を見て、彼に「私の映画に出演しない?」ってツイートしたの。そして、一緒にランチを食べて、彼は「イエス」と言ってくれたわ。その後、ケイト・ハドソン(以下、ケイト)がInstagramで確かクリスマスキャロルを歌っている姿を見て、彼女に面会を申し込んだ。彼女は「私はこの役のためにいる」と言ったわ。それで私は、ボーンと爆発したのよ。すべては運命ね。

私は『フォレスト・ガンプ』や『レインマン』、『ギルバート・グレイプ』などの映画が大好きで、それまであんなに素晴らしい作品を見たことがなかった。皆の心を折って、笑わせて、また元に戻してハッピーエンドにしたかった。子供の頃は、良い映画とはそういう展開をしていたの。キアラスクーロ的で明るさや暗さがあって、ユーモアもあると良いわよね。私としてはいつでもハリウッド的な結末が好き。でも、すごく満足のいかない結末も受け入れたいと思っているわ。人々が劇場を後にするとき、感動を噛みしめながら、ワクワクした、幸せな気持であってほしいと思ってる。

そのため、現場ではすべてができる限り最高の状態になるように気を配り、間違いも恐れないわ。「あなたは経験があるけど、私にとってこれは初めてのプロジェクトなの」と言うのも怖くない。撮影監督に「あなたが一番よく理解しているかもね」と言ったり、プロデューサーに「では、もう1テイクやりましょう」と言ったりすることを恐れないし、そうしなければならないから。でも、エゴはプロジェクトを台無しにしてしまうこともあって上手くいかないときもあるけど、とにかく、みんなで協力しているという感じで、よく笑っていた。美しい作品になったわ。


Q:グラミー賞授賞式をはじめ、様々な音楽の舞台では信じられないような創造力を発揮するパフォーマンスをしてきました。でも、映画作りはまた違うフィールドで、とても大変なことだったと思います。様々な音楽シーンをゼロから組み立て直し、さらにはヒューマンドラマを融合させているから、そういう意味では、これ以上ないほど野心的な映画だと思いました。

シーア:そうね。ミュージックビデオを監督した経験はあるから、今まで一番難しい挑戦だったけど、お気楽に、すごく長めのミュージックビデオを作るんだ、くらいに思ってたわ。たいていの映画監督は監督だけするもので、衣装デザインにアイデアを出したり、曲を書いたりしないってことに気づきもしなかった。だからやってみたの。毎日が爽快だったわ。準備も大好きで、毎日の撮影がとても楽しかった。問題が起きたからといっても、パズルみたいにいずれは解決するものだし。それが好きだったの。

キャラクターの心境を表現したあの音楽シーン、もともとはする気はなかったの。そしたら周りのみんながこぞって「あんた馬鹿なの?」って言うのよね。とうとう彼らの意見を取り入れて曲を書いたんだけど、それでストーリーが別次元に入った、ってとこかな。
ダグラス・クレイトンと脚本を書いている時も、頭で考えたセリフを実際に言ってみて、どう感じるか確かめたわ。それって音楽を作る時と全く同じなのよ。メロディを歌いながら詩を書くの。

そして、私の撮り方は本当に型破りでとても流動的だったから、プロデューサーや編集者はとても苦労したの。私の経験不足でうっかりそうしてしまって。自由なカメラワークを多用したから、とても難しかったわ。普通はリハーサルをして演出をして、それに沿って、シーンの各役のテイクを撮るごとにカメラのブロッキングや、すべてのキャラクターのブロッキングを忠実に守るものだけど、私はその辺りのことをよく知らなかったの(笑)。撮影監督は知っていたけど、それでも喜んでこの映画に関わってくれたのは嬉しいわ。おかげで、欲しい絵は全て手に入れることができた。


Q:本作では、監督としてキャストたちのすばらしい演技も引き出していました。彼らのパフォーマンスについてはどう思いましたか?

シーア:ケイトの場合はヘアスタイルね。出演が決まったとき「頭を剃ってもいい?」と聞いたら、「この役に専念します」と答えたの。それと、映画の中で飲み過ぎたズーが言うあるセリフがあるんだけど、これはあまり多くの役者が言いたがらないセリフなの。でも、彼女はそれを言ってのけたわ。これは私が映画の中で一番好きなセリフで、言った彼女はとても勇敢よ。
また、ご存じの通り、マディは私のミューズ。ミュージックってキャラクターはマディを思い浮かべながら書いた。彼女がほんの少女の頃から一緒に仕事してきたから、もう家族のようなものね。私が監督したミュージックビデオにも何本か出てもらったし、だから彼女と一緒ならミュージックという人間を生み出せるとわかっていた。ミュージックを自閉症の子供の繊細さを体現する人物にすることは、私にとっても、マディにとってもすごく大事だった。
そして、レスリーはこの映画にとって本当に重要な、地に足のついた存在感をもたらしてくれたわ。彼は映画全体を通して、たくましさや真面目さ、思いやり、強さ、そして静かな強さがあった。これはとても重要なことだったわ。でも、とても愛すべきキャラクターでもあった。それを神に感謝してるわ。


Q:『ライフ・ウィズ・ミュージック』で描かれている音楽シーンは、これまで手がけていたミュージックビデオや我々が知っている音楽映画に比べ、芸術的にも全く異なる方法が取り入れられているかと思いますが、いかがでしょうか?

シーア:私はちょっとした映画オタクだったんだけどね。アデレードに映画館があって、海外の映画が字幕付きで上映されていたの。『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』や『ニュー・シネマ・パラダイス』ね。私が子供の頃に見てきたこういった映画は、魔法のようで、粗いものだった。それを自然な形で物語に取り入れたかった。最初はヨーロッパ映画のような粗い感じを出したかったけど、ミュージカルは高濃度のカラーで表現したかった。今までのキャリアを通して、芸術と商業の間の境界線を模索してきて、たぶん35歳を過ぎた頃から本当にうまくいったの(笑)。成功したのもその頃よ。それと同じように、この作品を介してアートを作って、それを皆に見てもらい、感情を生み出したかった。芸術の目的は、感情を生み出し、見る人が自分の経験や人生を歌や映画に投影し、スクリーンに映るものを通して、自分の悲しみや喜びに触れることができるようにすることだから。


Q:誰もが音楽を必要としていると思います。この映画では音楽全般、登場するキャラクターの物語を通じてそれを教えてくれていますが、誰にこの映画を見てもらいたいですか?何を伝えたいですか?

シーア:全員によ。…だって、そのためにこのキャスティングをしたんだから。
ケイトは数々の作品で商業的な人気を集めていて、タブロイド紙を飾っている。そして全く別の、演技の世界でも多くのファンや支持者がいる。マディは、10代の若者たちから絶大な支持を得ている。トニー賞を受賞した俳優であるレスリーは、ブロードウェイ出身の俳優よ。

そして、私にとっては<繋がり>がこの作品のテーマだわ。最初はすごく怖かった。初めての試練のようなものだった。でも、今まで行けなかった地点まで行けて、素晴らしいチームに恵まれた。本当に素晴らしい経験だったわ。それに私はとてもラッキーだった。スタッフもキャストも皆、毎日ワクワクしながら撮影に臨んでいたわ。

人の想像力は、3、4歳の頃から働き始め、それが育たないと大人になったときに大きなダメージを受ける可能性があるんだって。過去を知ることはできないけど、想像力が育まれていれば、自閉症スペクトラムの人でも同じ人はいないし、みんな違うの。少なくともアルコール依存症のリハビリで出会ったあの子をモチーフに『ライフ・ウィズ・ミュージック』で描くことに最善を尽くせて良かったわ。

 

◎映画情報
『ライフ・ウィズ・ミュージック』
2022年2月25日(金)からTOHOシネマズ日比谷ほか全国で公開
監督・製作・原案・脚本:シーア
出演:
ケイト・ハドソン
マディ・ジーグラー
レスリー・オドム・Jr.

<STORY>
孤独に生きるズーを救ったのは、ミュージックと居場所だった―
アルコール依存症のリハビリテーションプログラムを受け、孤独に生きるズー(ケイト・ハドソン)は、祖母の急死により長らく会っていなかった自閉症の妹・ミュージック(マディ・ジーグラー)と暮らすことに。頭の中ではいつも音楽が鳴り響く色とりどりの世界が広がっているが、周囲の変化に敏感なミュージックとの生活に戸惑い、途方に暮れるズー。そこへアパートの隣人・エボ(レスリー・オドム・Jr.)が現れ、優しく手を差し伸べる。次第に3人での穏やかな日々に居心地の良さを覚え始めたズーは、孤独や弱さと向き合い、自身も少しずつ変わろうとしていくが……。


(C) 2020 Pineapple Lasagne Productions, Inc. All Rights Reserved.

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