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2022/02/14

<ライブレポート>TOMOO、“あなた”に届けたWWW Xワンマン 「YOU & Iの“I”はいらない。ひたすら“YOU”でいい!」

 現在、26歳のシンガーソングライターのTOMOOが、2月6日に東京・渋谷WWW Xにて、ワンマンライブ「TOMOO one-man live“YOU YOU”」を行い、今夏のメジャーデビューと8月7日に渋谷公会堂でワンマンライブを開催することを発表した。昼夜2回行われた公演のチケットは共にソールドアウトしており、この日を待ちわびていた大勢のファンが集まり、彼女の新たな旅立ちに温かな拍手が送った。

 1st SHOWの開演時間は15時30分。定刻を迎えると客電が暗転し、フロアには時計の秒針が進む音が鳴る中で、ステージ上のスクリーンにオープニング映像が流された。ピアノのある小さな部屋を出て、一歩ずつゆっくりと歩みを進め、扉を開いて光の中へ向かっていった。そして、ステージ上にTOMOOが登場し、昨年3月にリリースした配信シングル「HONE BOY」で勢いよくライブをスタートさせた。バンドメンバーをバックにハンドマイクで歌う彼女は、観客の心を射抜くような眼差しを向けながら、ステージ上を自由自在に動き回っていた。時にくるりと回転し、時にジャンプする。躍動感たっぷりのパフォーマンスに誘われるように自然とクラップが湧き起こり、続くファンキーなシティポップ「オセロ」では<ど真ん中笑って>というフレーズに合わせるかのようにチャーミングが笑顔を見せて観客を魅了。「こんな時にここにきてくれて、超、胸に刻みます」という挨拶を経て、インディーズ3rdミニアルバム収録の「らしくもなくたっていいでしょう」では、妖艶でセクシーながらパワフルで迫力のある歌声を披露。英語歌詞やアカペラのパートも含め、冒頭の3曲でヴォーカリストとしての様々な表情を見せてくれた。

 ここで、場内に雨音が流れ、TOMOOはピアノの前に座った。土砂降りの中で「私はここにいる!」と叫ぶかのような切実なロングトーンを響かせたソウルバラード「スコール」でバンドはステージを下りた。そして、コーヒーの香りを漂わせた「雨粒をつけたまま」からはTOMOOの原点とも言えるピアノの弾き語りスタイルで行われた。「記憶を辿りつつ、中学校の時の学校帰りの思い出がちょっと入っている久しぶりの曲」だという「地下鉄モグラロード」では、青空を避けて地下道に入り、スキップしながら駆けていく少女の姿が見えたような気がした。そして、逆光の眩い光の中で歌われた「Cigarette」では霧雨の中で終電間近の駅に向かって道を下っていく様が脳裏に浮かんだ。“雨”をキーワードにした情景描写の優れた歌詞。ファルセットやハイトーン、ウィスパーボイスを混ぜた切ない歌声がストーリーを引き連れてくる。ピアノ弾き語りによる中盤は、どこかドラマや映画を見てるかのような錯覚と余韻を残してくれる時間であった。

 「YOU YOU RADIO」という名のファンのお便りに答える映像の中で、ライブタイトル「YOU YOU」に関するお手紙を読んだ彼女は、「人に最初に届くのは熱で、残るのも熱。それは、歌ってる人が目の前の人に心の矢印が向いてる時だなって思って。ME じゃなくYOUに向いてる時なんだって思ったんですね。だったら、みんなに会えるライブをするときに、YOU & Iの“I”はいらないなと思って。ひたすら“YOU”でいいじゃんと思って、気持ちの決意を込めて、“YOU YOU”と並べました」と解説。その後に歌われた「いってらっしゃい」に込められた<歌いたいのは君の歌>というフレーズや、“あなた”の鏡になりたいと願いこそが、彼女が歌う意味であり、アーティストとしての本質なのだろう。ジャクソン5を想起させる「スーパースター」、茶トラの愛猫をモチーフにした「Ginger」と昨年に配信リリースしたファンクポップでフロアの熱気をあげた彼女は、「POP’NROLL MUSIC」でオーディエンスのハートを笑顔で撃ち抜き、駅のホームを舞台にした爽やかに煌めくラブソング「恋する10秒」を全てのエネルギーを出し切るかのように歌い上げ、バンドメンバーともに一礼をしてステージを下りた。

 アンコールでは、まず、映像によって、今夏のメジャーデビューと渋谷公会堂でのワンマンライブの開催が発表された。大きな拍手に迎えられて登場したTOMOOは、「ありがとうございます!」と感謝の気持ちを伝えた。

 「活動を始めてそろそろ10年くらいになるんですけど、じりじりとした歩みを続けてきて。その中でみんなに出会って、いろんな思い出が降り積もって。そういう中で信じてきたことを少しも壊さないまま、心を大事にしながら、一緒に音楽を作っていける人たちに、また新しく出会うことができました。心配してくれてた人や、ヤキモキしてた人もいると思います。でも、この10年くらい、そんなに変わってないんですよ。今度こそ環境も状況も新しくなるけど、自分が持ってる凸凹をつるっとさせていくことはなくて。凸凹は、誰かと一緒に歩くための凸凹として、地続きのまま、音楽を作り続けていける、人と一緒に歩いていけるという希望を持てるまでの10年間だったような気がしてます。これからはもっと楽しくなっていくと思うので、次の10年もよろしくお願いします」

 ライブの最後にピアノの弾き語りで歌われたのは、思い悩んだ夜を越えてドアを開け、薄灯の街に向かって歩んでいく様を描いた「高台」。「これからは強い人間になろうというよりは、“あなた”と生きるための弱さとして、そこから見えるものの描いていきたいなと思ってるんです。調子いい時もあれば、よくない時もある。吹っ切れたと思ったら、また視界が狭くなって、迷ったりもする。そういうのは繰り返し訪れるものなんだろうなって思うんですけど、大丈夫です。大丈夫ですよ」と語った彼女の中の矢印は今、間違いなく“私”ではなく、“あなた”に向いている。“私”が大事であるのと同じくらいに“あなた”のことを大事にしようとする彼女の姿には、どんな時でも“あなた”を絶対にひとりぼっちにはしないという決意と覚悟を感じた。そして、その歌声は優しく、小さな希望を湛えており、「大丈夫。大丈夫だよ」という言葉はおまじないのように胸に残っている。


Text:永堀アツオ
Photo:ゆうゆう


◎公演情報
【TOMOO one-man live“YOU YOU”】
2022年2月6日(日)
東京・渋谷WWW X

【TOMOO one-man live at LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)】
2022年8月7日(日)
東京・LINE CUBE SHIBUYA (渋谷公会堂)
Open 17:00 / Start 18:00
チケット指定席:5,500円(税込)
https://eplus.jp/tomoo/


◎配信リリース情報
シングル「酔ひもせす/グッドラック」
2022/3/30 RELEASE
https://lnk.to/TOMOO_0330

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