Billboard JAPAN


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2021/12/16

BBHF「歌うのがすごく楽しくて仕方なくて──」2年ぶりの有観客ツアー完走! 理想形とも言える、唯一無二の音楽空間を創造

 2016年に日本武道館で活動終了したGalileo Galileiの尾崎雄貴(vo,g)と尾崎和樹(dr)、サポートメンバーのDAIKI(g)によって結成されたバンド・BBHF。2018年の結成から様々な音楽的挑戦を繰り返し、進化の一途を辿ってきた彼らが、ひとつの理想形に到達したとも言える全国ツアー【BBHF「SUPER MOON TOUR 2021」】のファイナル公演を12月10日、Zepp DiverCity(TOKYO)にて開催した。

<物語の主人公となった感覚を得られる音楽空間>

 地球や月など宇宙空間に誘われたような感覚になる映像を映し出す、円形のスクリーン。その前方でDAIKIをセンターにサポートメンバーの岩井郁人(key)と岡崎真耀(b)がポジショニングし、その3人を両サイドから挟むように尾崎雄貴と尾崎和樹が位置取りするという、他のバンドライブとは一線を画す、まるでSFモノの映画やアニメの宇宙艦司令室内のような光景が満員のオーディションの眼前に広がる。そこに最初に響き渡った楽曲は「ホームラン」。太陽、月、宇宙のパイロット、衛星など、この空間とシンクロするフレーズが次々飛び出す楽曲でありながら、宇宙の片隅でひとり答えを求めて悩み考え続ける人間の心象も描く、その歌声と音楽によって我々は早くもこの物語の主人公となった感覚を得る。

 そのまま立て続けに披露された「シンプル」「僕らの生活」「だいすき」「1988」「黄金」のすべてにも言えることだが、どの音楽も冷静な評論や賛否を求めて生まれてきた訳ではなく、リスナーひとりひとりの人生や思考と交わって個人化される為に生まれてきたのではないか。他人が創造し、想いを乗せて表現したモノがまるで自分のテーマソング或いはサウンドトラックのように感じてしまう、その奇跡のような体験の尊さを知る為に存在しているのではないか。そんな音楽本来の有意義な機能がBBHFの楽曲群にはしっかりと内包されており、今回のライブに関しては宇宙の中の個人、世界の中の自分と対峙するのにうってつけの空間演出が施されていたこともあって、精神的な躍動を絶え間なく感じられるライブとなっていた。

 コロナ禍によって観客が声を出したり、体を激しく動かしたりする自由を奪われてしまったライブシーンではあるが、もちろんまたその自由を取り戻せる未来がやってきてほしいとは思うが、個人個人の脳内や精神世界で再生することで共鳴や鼓舞、学びを与えられるのもまた音楽の特性であり、その点において【SUPER MOON TOUR 2021】におけるBBHFのライブは今の時代においてひとつの理想形とも言えた。派手に激しくオーディエンスを煽るわけでもなく、汗まみれになって暴れまわりたくなる衝動を起こすようなライブでもないが、この音楽空間、もうちょっと少年っぽい表現をすれば、彼らが音楽で描く冒険によって心が湧き上がるライブ。

 その情感溢れる洗練された歌声と音像だけでも十二分に勝負できてしまう、満足させられる次元に今のBBHFは到達していた。

<演奏中に歌うのがすごく楽しくて仕方なくて──>

 「2年ぶりのツアーで、これまで行けてすらいなかった土地土地をまわってすごく楽しかったんですけど、今日が遂にツアーファイナルになります。有観客で、ストリーミングも合わせると、さらにたくさんの人に観てもらえているんだなということが……繋がれていることがすごく嬉しいです」

 そんな充足感を胸に歌われる「真夜中のダンス」や「かけあがって」。これらの楽曲に関しては、この日は再会できたファンへのメッセージとして響いていた。実際「僕がこうやって楽しめるのは ひとえに君のおかげなんだ」「今すぐ君だけの拍手を浴びたい」「なんだかんだ 僕は結局 続けられてる 君に会えたなら」といった今の状況とシンクロするフレーズが歌われる度に涙する人の姿も見受けられ、BBHFとファンの絆の深さを感じる。同時に、自分も「君」や「あなた」という大きな存在に生かされていることを実感していく。続く「涙の階段」も「リビドー」も自分に強烈な影響を与えてきた存在を浮き彫りにしていき、幻想的な音楽の調べに誘われるように愛おしさが膨れ上がっていく。彼らの音楽はイマジネーションを駆り立てる要素が多いゆえに個人化しやすく、聴き手の人生と重なるのだ。

 また、それだけ感情移入できてしまうライブの要因としては、そもそもの彼らの楽曲の力はさることながら、尾崎雄貴いわく「今回、久しぶりのツアーをベストなステージチームでまわることができて──」このクルーも含むバンドの状態も理想形に到達していたことが大きかったのだろう。これまで同会場(Zepp DiverCity(TOKYO))で幾多数多のライブを観てきたが、こんなにも美しく心地よい音像を描けていたライブを自分は知らない。「このメンバーがしっくり来るようになってから、ツアーをまわっていても思うんですけど、演奏中に歌うのがすごく楽しくて仕方なくて。ステージに上がることもそうですし、ストリーミングが今回入っていることもあって、もちろん緊張はするんですけど、喜びとか昂ぶりが緊張を超えてくることがこのチームで演奏しているとすごくあって。そんな素敵な状態を久しぶりのツアーで観てもらえることがすごく嬉しいです」

 そんな理想的な環境で音楽を奏で歌える歓喜は、本編クライマックスでさらに表面化されていき、特に最後の「君はさせてくれる」に関しては「ずっとこうやって生きていたいって そんな気に君はさせてくれる」というフレーズがこれまた、メンバーにとっても誇らしく愛おしい存在であるファンに向けての言葉とも受け取れ、今日ここまでで最もホープフルな空気を会場中に充満させていた。そして、アンコールでは「出てきた途端に一斉に立ち上がって拍手してくれるのがコンサートみたいで、コンサート感があってすごく嬉しいです。好きです」と、嬉々としながら「黒い翼の間を」をダイナミックに披露し、さらに「懐かしい曲を1曲カバーしたい」とGalileo Galileo時代の代表曲「恋の寿命」までお届け。これには当然ながら客席に笑顔が溢れ出す。音楽によって心が満たされていく瞬間。

<ツアーにリリース、BBHFが大きく動く2022年へ>

 「皆さんに嬉しいお知らせがあります。2022年の6月から全7箇所をまわるツアーが決定しました! 東京公演は7月にZepp Haneda(TOKYO)で開催されます。そんな流れでですね、今、僕たちはたくさん新曲を書いていまして、来年にEP、できたらアルバムをリリースしたいなと思っています。このツアーでもらったエネルギーをそのまま持って制作に入って、新しいテンションで「ライブができた」というエネルギーを込めたものを創りたいと思っています。なので、来年はツアーもあるし、大きなリリースもあるし、BBHFとして大きく動く1年になるんじゃないかと思っていますので、来年も一緒にめちゃめちゃに楽しみましょう!」

 そんな2022年のBBHFにも期待せずには入られない告知のあと、「その今書いている新曲の中から、まだ未完成なんですけど、1曲聴いてもらいたいと思っています」と「死神」という未発表曲をお披露目。「死神を横にさっと避けて 見つめ合って生きている」といったインパクトの強いフレーズが飛び出す楽曲ながら軽やかな解放感も併せ持つ、今のBBHFだからこそ創造できる絶妙なアンサンブルを誇るナンバーであった。そして、ライブは「めちゃめちゃに名残惜しいんですけど、最後の曲です。今日は本当にありがとうございました」とオーラスの「愛を忘れないで」へ。そのタイトル通りの想いを込めたハートフルな音像とメッセージでもって自らも、そして、そこに居合わせたすべてのファンを未来へと歩ませていくイメージ。最後の最後まで純然たる音楽の力、面白さを堪能させてくれるライブであった。2022年の BBHFへの期待も募るばかりだ。

取材&テキスト:平賀哲雄
カメラマン:鳥居洋介

◎ライブ【BBHF「SUPER MOON TOUR 2021」】ツアーファイナル
2021年12月10日(金)Zepp DiverCity(TOKYO)セットリスト:
01.ホームラン
02.シンプル
03.僕らの生活
04.だいすき
05.1988
06.黄金
07.真夜中のダンス
08.かけあがって
09.涙の階段
10.リビドー
11.バック
12.Torch
13.なにもしらない
14.君はさせてくれる
En1.黒い翼の間を
En2.恋の寿命(オリジナル:Galileo Galilei)
En3.死神
En4.愛を忘れないで
<アーカイブ配信中(12月17日23:59まで)>
https://eplus.jp/sf/detail/2507230002

◎ライブ情報
ツアー【BBHF TOUR 2022】
2022年06月10日(金)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
2022年06月12日(日)大阪府 なんばHatch
2022年06月18日(土)宮城県 darwin
2022年06月25日(土)福岡県 DRUM LOGOS
2022年06月26日(日)広島県 LIVE VANQUISH
2022年07月01日(金)東京都 Zepp Haneda(TOKYO)
2022年07月09日(土)北海道 札幌PENNY LANE24
チケット:オフィシャル先行
2021年12月10日(金)21:00~2022年01月16日(日)23:59
https://birdbearhareandfish.com/tour/1031.html

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