2021/10/04
洋楽が冬の時代といわれて久しいが、2021年9月29日発表のBillboard JAPAN 総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100”では洋楽曲が2曲もトップ10にチャートインしている。ひとつはザ・キッド・ラロイxジャスティン・ビーバーの「ステイ」で、11週連続チャートイン、3週連続トップ10入りという素晴らしい結果となっている。そしてもう一曲が、今週初登場で9位にチャートインしたコールドプレイ X BTSの「マイ・ユニバース」だ(【表1】)。
この曲は聴けばわかる通り、コールドプレイの楽曲にBTSのヴォーカルやラップをフィーチャーしたという図式の楽曲である。メロディやサウンドは完全にコールドプレイ主体ではあるが、挿入されるBTSの声がいいアクセントになってインパクトのある楽曲に仕上がっている。UKロックの頂点を極めたバンドと、最も旬なK-POPアーティストのコラボレーションが話題にならないわけはないが、こういったジャンル違いの共演は場合によっては足を引っ張り合うリスクもある。ただ、今回はしっかりとプラスとなっているようだ。
コールドプレイはアルバム・リリースを控えているため、話題性が必要だった。その意味では先行シングルであるこの曲がヒットするのは必須であり、きちんと成功している。そして洋楽に縁がないK-POPのファンにもアピールできたことは、この曲の最大の効果といえるだろう。一方のBTSにとっては、チャート効果に関してはそれほど期待はしていないはずだ。実際、今週の上位にはすでに「Permission to Dance」(3位)、「Butter」(7位)、「Dynamite」(8位)が君臨しているため、「マイ・ユニバース」が何位になろうとBTSとしてはすでに安泰で、ワン・オブ・ゼムでしかない。あくまでも世界的なロック・バンドと共演できたという実績を作れたことだけで十分だ。
とはいえ今後のチャート動向が気になるは当然。9月30日には両者が出演するSF仕立てのMVがプレミア公開されたので、現状32位を記録している動画再生数は、来週には大幅にアップすることだろう。それにともない、Twitterのツイート数も同じように増えるはずだ。さらにいえば、右肩上がりに伸びる傾向があるストリーミングも増えていくことが予想される。
そのあたりを考えると、他のリリース状況にもよるが、さらにチャート・アップも見込まれる。そして、10月15日リリースのコールドプレイのアルバムのタイミングでは、ラジオのオンエア回数、Twitterのツイート数などがまた一気に増大するだろうし、その時点で楽曲が独り歩きしていれば、他のBTSの楽曲同様に数か月に渡るロング・ヒットとなる可能性もあるのだ。
洋楽ヒットを作るのは本当に難しい時代になったが、グローバルなヒットが生みやすい環境になった今、逆手に取って日本でも洋楽ヒットを生み出せるチャンスが来たといってもいい。日本のアーティストもこういったコラボレーションを積極的に行い、世界に目を向けたボーダレスなヒット曲を作っていってほしいと思う。
Text:栗本斉
◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
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