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2021/09/15

JUVENILE「可能性を広げていくコラボレーションがしたい」DAZBEEとの新曲配信記念インタビュー公開! ボカロ&「歌ってみた」シーンについても語る

 「From Tokyo To The World」を掲げ、RADIO FISH「PERFECT HUMAN」など手掛けてきた楽曲群のYouTube総再生数は1億回以上。独自のCity Musicを発信し続けるDJ/アーティスト/音楽プロデューサーのJUVENILEが、ボーカロイド楽曲のカバー中心に絶賛されている韓国在住の女性ボーカリスト・DAZBEE(ダズビー)をフィーチャリングした新作『シーリングライト・ファン feat.DAZBEE』を配信リリース。このタイミングで同作についてはもちろん、ボカロシーンや「歌ってみた」シーンについて語るインタビューに応えてくれた。ぜひご覧いただきたい。

◎JUVENILE『シーリングライト・ファン feat.DAZBEE』配信記念インタビュー

<米津玄師から始まったムーヴメント──JUVENILEから見たボカロシーン>

--『ミラールージュ feat.Liyuu』『Pick Up feat. 輪入道』に続く3か月連続リリース第3弾『シーリングライト・ファン feat.DAZBEE』がこの度配信されました。どのような経緯からDAZBEEさんをフィーチャリングアーティストに迎えようと思ったのでしょう?

JUVENILE:昨年末リリースの1stアルバム『INTERWEAVE』の時点で「すごく良い声している」と思ってお声掛けさせて頂いていたんですけど、DAZBEEさんは韓国にいらっしゃったんですよ。1枚目のアルバムということでリモートじゃなく直接お会いして制作できる人を探していたので、そのときはコラボレーションを実現できなかったんですけど、今年はコロナ禍による新しい生活様式に慣れてきたこともあって「今ならリモートでも良いモノが作れるんじゃないか」と改めてオファーさせて頂いて、そしたら快諾して下さったんです。彼女をフィーチャリングしたかった理由としては、その歌声が魅力的だったのはもちろん、国際的でありながら日本のサブカル、ボカロシーンにも精通しているところが面白かったからで。YOASOBIさんがブレイクしたり、Adoさんの「うっせぇわ」が大ヒットしたあたりから、ボカロPが人間の歌声で展開していく流れがひとつのムーヴメントになっていたこともあって、DAZBEEさんとご一緒してみたかったんですよね。

--DAZBEEさんは2012年からボカロ曲の生歌カバーに取り組んで注目を集めていたシンガーですもんね。

JUVENILE:ニコニコ動画の「歌ってみた」から登場したシンガーなんですけど、ただ「DREAMS COME TRUEを歌ってみた」とか「Mr.Childrenを歌ってみた」とかじゃなくボカロ曲のカバーに挑戦していて、それを支持する人たちもたくさんいて、しかも韓国人っていう。日本語が元々ベラベラだったわけじゃなくて、日本のボカロが好きで勉強して歌えるようになった経緯もリスペクトできるし、それでいて歌声も良い。

--そんなDAZBEEさんと実際に共演してみてどうだったかは後程掘り下げさせてほしいんですが、彼女が世に出たきっかけでもあるニコニコ動画をメインフィールドとしたボカロシーン。初音ミクの登場と共にムーヴメント化した当初はどんな印象を持たれていましたか?

JUVENILE:正直「よく分からないな」と思っていましたね。自分のやっている音楽とはちょっと違うというか、根っこで繋がっていれば理解できたと思うんですけど、根っこが違うなと思って。アニソンとかバンドから来ているシーンという印象だったから、ヒップホップとかクラブカルチャーから始まっている僕とは流れが違うと感じていたんです。今となっては偏った見方だったなと思うんですけど、当時は海外のEDMに注目していたこともあって「僕とはシーンがちょっと違う」と感じていた記憶がありますね。

--ちなみに、ボーカロイドを使用したことはあるんですか?

JUVENILE:ないんです。遊びでも使ったことがないんですよね。自分のまわりに歌が上手い人はたくさんいたから「歌も自分で打ち込んで作ろう」という発想にならなかったんですよ。僕はトークボックスをやっているんで、自分の声をボコーダーとかで換える作業はよくやっているんですけど、ボーカロイドを使おうと思ったことはなかったです。まぁでもこれだけ多種多様なジャンルの音楽を作っている身としては、いつかアルバムの中の1曲ぐらいボカロ曲を作ってみても面白いかもしれませんね。1stアルバム『INTERWEAVE』に参加してくれたアーティストの皆さんもジャンルとしてはバラバラだったんで、そういう作品の中で1曲ぐらい人間じゃないアーティストがいても良いでしょうし。

--先程、YOASOBIやAdoの名前も挙がりましたが、近年はボカロPとしてキャリアをスタートさせたアーティストたちが肉声で歌うようになり、次々と日本のヒットチャートを賑わす存在へと進化しています。この状況にはどんな印象を抱かれていますか?

JUVENILE:ホームランが何発か続いていて、最新のデカいどかーんは「うっせぇわ」ですよね。その前がYOASOBIさんで、そもそもの流れを作ったのは米津玄師さんになると思うんですけど、米津玄師さんが台頭してきたときは「天才だな」と思いました。時代が違えばサザンオールスターズやMr.Childrenに並ぶスーパースターになっている逸材ですよね。桑田佳祐さんや桜井和寿さんと肩を並べられる天才。今はエンタメ自体が多様化しているからアレですけど、みんながCDを買いまくっていた時代だったら米津玄師さんも今以上に凄いことになっていたでしょうね。コード進行やメロディーに癖の強いパターンがあって、それが米津玄師さんっぽさなんですけど、仮に米津玄師さんが歌っていなくても「米津玄師さんの曲だ」って分かるんですよ。それって凄いことだし、あとはすべてのレベルが高い。歌が上手くて、メロディーが良くって、アレンジも素晴らしくて、完璧ですよね。絵やダンスの才能もあるし、ひとりで何でも出来てしまう。「何刀流ですか?」って感じですよ。単純に凄いなと思うし、尊敬します。

<DAZBEEが初めて歌うドージャ・キャット然としたオリジナル曲>

--DAZBEEさんは「歌ってみた」で台頭したシンガーのひとりですが、あのシーンに対してはどんな印象を持たれていたんですか?

JUVENILE:「歌手デビューしたいです」と思ったときに僕らの世代はまず何をしたかと言うと、ヒップホップが好きならまずクラブで歌い始めたり、バンドが好きならまずコピバンを組んだりしていた訳ですけど、それと同じラインで今はまずニコニコ動画に「歌ってみた」を公開したり、TikTokに動画を上げてみたりする時代になったんですよね。むしろソレが自分を売り込む為のツールとして第一候補になっている。かつてはライブシーンで名を馳せていく流れが主流でしたけど、今はインターネットの発達もあってどこでも歌を届けられるようになったし、ライブハウスで活動するより多くの人に自分の存在を知らしめることが可能になったので。あと、バンドを組むにしても最初からオリジナルはやらないじゃないですか。それと全く同じ感覚で「歌ってみた」系の動画をまずは公開していく人が増えたんだろうなと思いますね。

--実際にその流れでブレイクしている人が増えていますし、必然的にソレが主流になっていきますよね。

JUVENILE:1stアルバム『INTERWEAVE』のジャケットのイラストは、音楽におけるニコニコ動画みたいなサイトのpixiv(ピクシブ)で見つけた人に手掛けてもらったんですけど、今ってそういう場所から発掘していく流れが主流になっていると思うんですよね。昔は自分を売り出す為には営業するしかなかったけど、今は逆に見つけてもらう流れになっていて、その為のツールが音楽の場合は動画投稿系のサイトやアプリになっている。

--今の話を聞いて思ったんですけど、JUVENILEさんは「この人、めちゃくちゃ才能あるじゃん。一緒にやってみたい」的な感覚でネクストブレイク系のアーティストにもよく声をかけていますよね?

JUVENILE:そうですね。気持ちとしては「一緒に有名になりたいな」って。トータルバランスで僕より有名な方に「お力を貸してください」とお願いするパターンもありつつ、これからどんどん売り出そうとしている方にも「一緒にやろうよ」と声を掛けているんですけど、気持ち的にはどっちに傾いているかと言うと後者ですね。僕とのコラボレーションをきっかけに一緒に上がっていけたらと常に思っていますね。

--JUVENILEさんも敬愛するm-floのlovesシリーズと近いマインドですよね。あのプロジェクトも、わりとまだ無名だけれども才能のある若手アーティストを次々と起用されていたじゃないですか。そして、それをきっかけにブレイクしていく人も多かったですし。

JUVENILE:たしかに、lovesシリーズと通ずる部分はありますね。あと、EDMシーンもそういうパターンは多いんですよ。ZEDDとかもまだ無名のアーティストとフィーチャリングしたりするんですけど、それをきっかけにその人が一気にブレイクしたりする。良い文化ですよね。

--フィーチャリングすることで同時にレコメンドもしているパターンですよね。JUVENILEを聴いていれば次から次へと新しい才能に出逢うことができて、一気にいろんなジャンルにも詳しくなれるっていう。実際、今回の新曲でDAZBEEさんのことを知った自分は「めちゃくちゃ良い声だな」と思って過去の動画も掘っちゃいましたもん。

JUVENILE:そうやって自分の作品をきっかけにフィーチャリングアーティストに注目してもらえるのは嬉しいですね。DAZBEEさんめちゃくちゃしっかりしているんですよ。素直だし、礼儀正しいし。その上で歌も良くて、才能もある。

--今回の新作『シーリングライト・ファン feat.DAZBEE』では、そんな彼女のどんな魅力を引き出そうとして制作されたんでしょう?

JUVENILE:これまでボカロ曲中心にいろんなカバーを歌ってきて、その中で自分らしさみたいなモノを歌声で表現されてきたと思うんですけど、今回はオリジナル曲だったので「ボカロ以外で普段はどんな曲を聴くんですか?」とまずヒアリングしたんです。そしたら結構洋楽を聴いていたんですよね。で、Doja Catが好きだと伺ったので「そういう曲を作りましょうか?」と提案したら「ぜひ歌ってみたいです」と。それで完成したのが『シーリングライト・ファン feat.DAZBEE』なんですけど、先日「無事リリースできました。ありがとうございました」って連絡したら「こういう曲を今まで歌ったことがなかったんで、良い勉強になりました」と喜んでくれたんで良かったなって。僕は自分とコラボレーションして頂く以上は少しでもクリエイティヴに参加してほしいんですよね。こちらで勝手に「こういう曲を歌ってください」とお願いして制作したモノと「こういう曲を歌いたいです」と本人が望んで制作したモノとでは、圧倒的に後者のほうが有意義だと思っているんですよ。これが「もっとオリジナルを歌いたい」と彼女が思ってくれるきっかけになるかもしれないし。

--「新たに挑戦してみたい」と思った曲を歌ってもらったことが大きなターニングポイントになる可能性もありますしね。

JUVENILE:そうですね。後になって振り返ってみたら「あの曲がきっかけで」みたいなこともあるかもしれないし。そういう可能性を広げていくコラボレーションは今後もずっとやっていきたいことです。

<JUVENILE 2021年の集大成「鉄棒から手を離した状態!?」>

--JUVENILEさんは毎回フィーチャリングアーティストの新たな魅力を引き出されていますよね。ゆえに思うのは、今はコロナ禍だから難しいと思うんですけど、これまでフィーチャリングしてきたアーティストのライブに全部行って生共演してほしいなって(笑)。

JUVENILE:なるほど(笑)。今は難しいですけど、楽曲はそれぞれ完成しているので、いつか出来たら良いですよね。

--さて、今回の『シーリングライト・ファン feat.DAZBEE』でもって3か月連続リリースを終えた訳ですが、やり遂げた今の率直な心境を聞かせてください。

JUVENILE:『ミラールージュ feat.Liyuu』『Pick Up feat. 輪入道』『シーリングライト・ファン feat.DAZBEE』の順番でリリースさせてもらったんですけど、女の子、ゴリゴリの男性、女の子の流れだったから、まとめて振り返ってみると輪入道君の異質さが際立ちますよね(笑)。この3部作でジャンル的にもフィーチャリングアーティスト的にもだいぶ振り幅は出せたんじゃないかなと思いますし、でも芯にはヒップホップやR&B、ファンクといったブラックミュージックがしっかり根付いているなとも思います。それが今回やりたかったことなので、トータル的に満足していますし、この3人で良かったなって。

--この3部作のリリース以降は、どんなヴィジョンを描かれているんですか?

JUVENILE:2021年はヒップホップを主軸に音楽制作していくと以前お話したんですけど、結果的にヒップホップから派生してブラックミュージック全般に広がっていて。ヒップホップ強めではあるんですけど、今新たに制作している楽曲群にはジャズの要素があったりとか、ディスコファンクの要素があったりとか、結構カラフルなグラデーションになっていますね。ただ、それらの楽曲で新しいアルバムを完成させられたらと思っているんですけど、まだ完成系が見えていないんですよ。例えるなら、技を決めにいっている最中で「これはどういう技だ? 最後、どういう着地をすればいいんだ?」みたいな。鉄棒をぐるぐる回っていたところから手を離して、今はもう空中に浮いている状態なんですけど「どっちに捻ればいいんだろう? 何回転すればいいんだろう? あれ、このまま落ちたら足から着陸できなくない?」みたいな感じです(笑)。

--もう宙に舞っている状態なのに、考えることが多すぎますね(笑)。

JUVENILE:頭から落ちないようにしないと。でもまだ回転の向きとか決められていないんですよ。なので、このインタビューを受けている時点ではどう着地するか自分でも読めていないんですけど、あとはもう周りのお力添えや神風的な何かに期待して(笑)。とは言え、楽曲のひとつひとつは面白いモノになると確信しているので、楽しみにしていてほしいですね。さて、何とかするぞー(笑)!

Interviewer:平賀哲雄

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