2021/09/10
クラシック、ジャズ、ポップスを自在に横断する美しい歌声と華麗なヴァイオリン演奏で、国内外の様々なファンを魅了し続けるサラ・オレイン。鬼才ヴァイオリニストの壷井彰久、数々のアーティストの活動を支えるピアニストの塩入俊哉という2人の名手とのトリオ編成で9月4日(土)にビルボードライブ大阪で行われた公演は、タイムリーな洋邦のカバー曲選びや初となる音楽的な試みなども織り交ぜながら、聴く者すべてを彼女ならではのファンタジーの世界へと誘う圧巻のセットとなった。
アンビエント的なバッキングに乗せて、幻想的な歌声を響かせながらサラがステージに登場すると、ジャジーな歌い回しに転じてミュージカル映画音楽からニ曲、『チャーリーとチョコレート工場』より「Pure Imagination」、『オズの魔法使い』より「虹の彼方に」を披露。英語と関西弁で挨拶した後に「今日はみなさんをファンタジーの世界へお連れしたいと思います」とMCで告げると、ゲーム音楽『予言者育成学園 Fortune Tellers Academy』の主題歌として自身が歌った「Glory」、2部ではゲーム『クロノ・クロス』より「Radical Dreamers」、ヴァイオリンを手にしてダンサブルな自身作曲のオリジナル曲「Animus」と続けていった。
そして、再びトークを挟んで披露されたのが、先日40年ぶりとなる再結成のニュースが大きな話題となったABBAの代表曲のひとつである「The Winner Takes It All」。ドラマチックに高揚していくアレンジで巧みに聴かせると、続いてはチック・コリアの名曲「Spain」へ。客席に手拍子を求めながらスパニッシュな旋律を歌って盛り上げると、一転して日本語らしい情感に満ちたボーカルで荒井由実の「ひこうき雲」。去年亡くなられた自身の友人の思いを語り、最後は天井に向かって彼女にお別れを告げるかのように、投げキスをして手を振った。起伏に富んだ曲選びでオーディエンスを魅了し続けた。
衣裳をシックなものにチェンジしての後半は、自身の歌声をその場で多重録音的に重ねていくことができるルーパーを駆使し、幻想的な声のシンフォニーで新境地を示すと、ピアノに移って〝コレは現実なのか?ファンタジーなのか?〟という歌い出しで始まるクイーンの名曲「Bohemian Rhapsody」を披露。今回の公演のテーマであるファンタジーの世界のより奥深くへと聴き手を引き込むと、ダンサブルな「Fantasy On Ice」を挟んで取り上げられた韓国のBTS「Dynamite」ではPVを観ながら自身で考案したダンスも交えながら歌い、場内のテンションをさらに高めたところで大阪らしくドリカムの「大阪Lover」へとメドレー的に流れ込んでいった。そして、本編のラストは不朽の名曲「My Way」。この社会で生きていると、色々な障害物が私たちのメンタルをやっつけようとする。そんな現実と立ち向かうためにも、私たちにとって大事なのは心安らぐ、夢見るファンタジーの世界ではないだろうか?という彼女のメッセージを感じた。多くの思いを胸に叙情的に締めて、新たな試みに満ちたセットを一気に駆け抜けた。
アンコールでは、テレビ番組で披露した『アラジン』よりジャスミン姫の衣装で登場し、現在公開中の映画『竜とそばかすの姫』の劇中歌、そしてディズニー映画の定番『アラジン』から「Speechless」を披露。洋邦の映画の姫ソングを続けると、ラストソングはプッチーニによるオペラの名作『トゥーランドゥト』の「誰も寝てはならぬ」。アンコール全てを姫ソングで構成し、最後はクラシカルに締めた。
厳しい現実に向き合う事だけが生きることじゃない、たまにはファンタジーの世界に逃げてもいいじゃないか、音楽という安全地帯に避難してココロの元気を取り戻そう!そんな彼女の意志や音楽的なヴィジョンがより濃密に反映された今回のトリオでのツアーは、大阪公演とは編成を変えて、パーカショニストの仙道さおりとのトリオで9月12日(日)にビルボードライブ横浜で行われる。
Text by Hidesumi Yoshimoto
Photo by Masanori Naruse
◎公演情報
【サラ・オレイン Sarah Alainn Trio『Billboard 2021』】
ビルボードライブ東京
2021年9月2日(木)※終了
ビルボードライブ大阪
2021年9月4日(土)※終了
ビルボードライブ横浜
2021年9月12日(日)
1stステージ 開場14:00 開演15:00
2ndステージ 開場17:00 開演18:00
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