2021/08/21 12:00
2021年8月18日発表のBillboard JAPAN 総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100”では、圧倒的な強さを見せたSixTONESに続き、BTSやYOASOBIといった常連組が上位を独占している。その中でしっかりと順位をキープしているのが、6位にチャートインしているOfficial髭男dismの「Cry Baby」だ(【表1】)。
ヒゲダンといえば「Pretender」に代表されるようなロングヒットの印象が強く、この「Cry Baby」も例外ではない。5月に配信リリースされてから、3か月以上もトップ20をキープするのは並大抵ではないだろう。ここにはロングヒットとなり得る秘密がいくつもある。
まず、8月リリースのアルバム『Editorial』の先行シングルであることが大きな理由のひとつだろう。約2年ぶりのアルバムということで注目を集めるのは当然だし、それだけメディアの露出も大幅に増えるタイミングだ。シングルからアルバムまでの3か月はチャートをキープさせる期間であり、この間に戦略的なプロモーションを組み立てることは大事。実際、かなりしっかりとプロモーションされているという印象がある。
加えて、4月より放映が始まったTVアニメ『東京リベンジャーズ』の主題歌という大型タイアップが決まっていることも重要だ。アニメのタイアップは単に露出が増えるということもあるが、この『東京リベンジャーズ』に関しては、実写映画化されて大ヒットしたこともあって、映画はヒゲダンとは直接関係ないとはいえ、『東京リベンジャーズ』というブランド自体が盛り上がっているということも後押しとなったのではないだろうか。
しかし、「Cry Baby」がロングヒットする本当の要因は、この楽曲そのもののクオリティにあるのではないかと感じている。というのも、「Cry Baby」は非常にエネルギッシュでポップな作品でありながら、とにかく転調が多く一度聴いたら耳に引っかかる非常にインパクトの強い楽曲だ、これだけ複雑な転調を繰り返すと、気になって何度も聴きたくなるし、カラオケ好きな人ならなんとか歌いこなしたいと思うのではないだろうか。事実、ストリーミング数や動画再生数、カラオケの歌唱回数などのポイントはじわじわと伸びているのは、この楽曲の特性にも強く関わっているのではないかと思う。今後のテレビ出演を含めた彼らの露出によっては、まだまだ上昇してもおかしくない。状況によっては「Pretender」と並ぶヒット曲、代表曲となるだろう。
ヒゲダンは「Pretender」から前作のアルバム『Traveler』で大きなのピークを作った。そして「Cry Baby」では、また違った形で彼らの成長ぶりを見せてくれるはずだ。
Text:栗本斉
◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
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