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2021/07/02

<レポート>オリヴィア・ロドリゴ、名物ハイスクール・イベントをライブ化した【サワー・プロム】で歌&演技の技量を発揮

 2021年1月8日にシングル「drivers license」で正式な歌手デビューを果たしたばかりのオリヴィア・ロドリゴ。同曲は、米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”で初登場から8週連続で1位キープするという大記録を打ち出し、世界中のチャートを圧巻したのも記憶に新しい。4月には2ndシングル「deja vu」が8位に、翌5月には3rdシングル「good 4 u」が「drivers license」に続く2曲目のNo.1デビューを飾った。「good 4 u」の翌週に発表したデビュー・アルバム『サワー』は、上半期最大の週間ユニット291,000を記録して米アルバム・チャート“Billboard 200”でも1位に初登場している。

 わずか半年間で大スターに昇り詰めたオリヴィアは、2月に18歳のバースデーを迎え、ハイスクールを卒業したばかり。どこへ行ってもフラッシュを浴びるほど多忙な毎日が続き、一般的には卒業式前に開かれるダンスパーティーの「プロム」に参加できなかった模様。その代替とアルバムのヒットを記念して開催されたのが、そのまま【サワー・プロム(SOUR Prom)】と題したこのオンライン・ライブだ。

 公式YouTubeチャンネルでは、ライブが始まる30分前からストリーミングが可能となり、10分のカウントダウンを経てピンクのワンピースに三つ編み風のツインテールというファンシーな装いのオリヴィアが登場。朗らかに挨拶をした後、スマホを片手にチャットを見ながらファンとコミュニケーションをとったり、舞台の裏話をちょっと早口で教えてくれたりした。

 約10分のトークタイムを終え、また10分のカウントダウンが始まる。チャットの参加人数が急速に増え始め「I Can’t Wait!!」等の投稿が鳴りやまない。定時画面が切り替わると、閑静な住宅に白いリムジンが迎えるミュージック・ビデオやドラマのようなオープニング・シーンが浮上。「Livestream Concert Film」というコンセプトの通り、映像作品と一体化したライブとなっている。

 胸元に大きなリボンをあしらった青いミニドレスで、颯爽と車に乗り込むオリヴィア。プロムの参加者にはリムジンを借りるカップルやグループもおり、そのあたりの演出も忠実に再現されている。車内では女性アーティストがアコースティック・ギターを演奏していて、オリヴィアは彼女の向かいに座り「happier」をしっとり歌いはじめた。こういう形でライブがスタートするのも、空がサイケグラフィック調の模様に変わる“心境の乱れ”を表現したような場面も“らしい”演出。通常ライブでは逆パターンの方が多いが、この曲では原曲より少しキーを高くして音域の広さを強調している。

 リムジンを降りると、カラフルな風船で彩られた学園に到着。SNS用に自撮りしている女の子たちをさりげなく配置するあたりが現代版らしい。そして中にあるホールに移動すると、オリヴィアの親友のコナン・グレイも姿も。友人役のバンド・メンバー&ダンサーたちとアルバムのオープニング・ナンバー「brutal」をあふれる若さでパフォーマンスする。絡み合って踊ったりジャンプしたり、ファンキーにシャウトしたり……と、リアルに楽しんでいる様子が伺えた。

 煌びやかな照明がおとされて薄暗くなり、フロアはチークタイムへ。かつては男女がカップルで参加するのがプロムの定番だったが、昨今では同性のカップルやグループも多く、このシーンでもZ世代ならではの演出が見受けられた。それぞれが寄り添う中、儚い乙女心を綴った「traitor」を優しく、時に激情的に歌い上げる。自身が主演するディズニープラスのオリジナル・ドラマ『ハイスクール・ミュージカル:ザ・ミュージカル』を彷彿させる場面やコンテンポラリー風のダンスなど、見所が満載。

 続いては中央のステージに移動して、ガールズ・バンドをフィーチャーしたロック・チューン「jealousy, jealousy」を披露。チークのしっとりした雰囲気から一転、ドラムとベースが重たく響くパワフルな演奏がたのしめる。ゾンビのようにたかるダンサーのパフォーマンスは「周囲の雑音に惑わされる心境」を、ホールから抜け出し光を遮断する暗室でひとり佇む様は、学園生活にありがちな「ちょっと一人になりたい」心境をイメージしたような展開だ。

 暗室の中央には高イスとスタンドマイクがセットされていて、オリヴィアはそこに座りアコースティック・ギターをもって「enough for you」を弾き語りする。抱えるコンプレックスと失恋の痛みを歌う同曲、その内容も含めテイラー・スウィフトのライブを意識したようなパフォーマンスだった。歌と表情の作り方はもちろん、ギターの演奏も見事なもの。心を落ち着かせて再び通路に移動し、黒いジャケットを羽織って野外のサッカー・スタジアムへ……。

 辺りを見渡しながら前に進むと、両サイドでダンサー(友人)たちが手拍子で迎えてくれた。彼らのコンテンポラリー・ダンスをバックに従え歌うのは、前述の大ヒット曲「drivers license」。オレンジのライトをバック浴びながら地声でエモーショナルに歌い上げた“倒れ込みのブリッジ”は、ライブのハイライトともいえる素晴らしさ。本編のラストは、このパートのためだけに運び込まれた中央にあるグランドピアノで弾き語る、贅沢な演出で幕を閉じた。ライブでいうアンコールには、現在チャートを席巻する「good 4 u」をマーチング・バンドによるアレンジで披露。ドラムラインを彷彿させる演奏、チアリーダーたちによるダンス・パフォーマンスが華々しく、最終曲に相応しいテンショの高まりをみせた。

 ハイスクールの名物イベント「プロム」をライブで演出するというコンセプトを基に、幼少期から培った演技や歌の技量も活かされ、ディズニー出身独自のティーン・ポップらしい雰囲気作りも良くできたライブ/映像作品に仕上がった【サワー・プロム】昨年10月に配信したビリー・アイリッシュのオンライン・ライブは、巨大なLEDスクリーンと最先端のXR技術を駆使した現代らしいステージだったが、それとは対照的なアナログ感のある従来のポップ・シンガーらしいライブだった。それもまた、オリヴィア・ロドリゴらしい。

 今回は時世を考慮したコンセプト重視のオンライン・ライブだったが、パンデミックが収束したら『サワー』の正式なワールド・ツアーにも期待したい。

Text: 本家 一成

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