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<コラム>【No No Girls】が、他のガールズグループのオーディションとは一味違う理由――ちゃんみな“だから”伝えられるメッセージとは
Text:高橋梓
視聴者まで自己肯定感が上がってしまうオーディション番組がある。SKY-HIがCEOを務めるBMSGと、女性から絶大な人気を誇るラッパー/シンガーであるちゃんみながタッグを組んだ【No No Girls】だ。
事の発端は2023年11月4日に神奈川・横浜アリーナでおこなわれた【バズリズム LIVE 2023】。ちゃんみなのステージにSKY-HIがサプライズ登場し、オーディションの開催と、そこで誕生したガールズグループが所属するプロダクションの設立を発表したのだ。のちにSKY-HIはインタビューで「男性のみを募集するってすごく前時代的じゃないですか。自分がこれまで諸々のギャップで苦しめられてきたにもかかわらず、考え方によってはすごくジェンダーギャップの促進につながりかねないことをやっているんじゃないかという、自責の念も感じていました」「女性だから受け入れてもらえないっていう人がいるのはどうなんだろうとか。気にはしていたけど、自分ではできない。そうした意味でも、ちゃんみなのおかげでBMSGがより理想的な歩みを進められることに、すごく感謝してます」と語っており、ちゃんみなの存在が非常に重要になるオーディションであることがわかる。
SPECIAL TALK with SKY-HI & ちゃんみな - GIRLS GROUP AUDITION PROJECT 2024 "No No Girls"
というのも、ちゃんみなの生き様が多くの女性の共感を呼んでおり、彼女がプロデュースするグループ“だから”挑戦したいと思う人が多いためだ。それは、SKY-HIがBE:FIRSTが誕生することとなったオーディション【THE FIRST】を開催した時と似たムーブメントと言えるだろう。それほどまでにちゃんみなの女性人気は高い。SKY-HIも【No No Girls】開催にあたって、「(2023年3月に開催された横浜アリーナ公演)【AREA OF DIAMOND】を見たときに、8~9割が女性のお客さんが、『うお~っ! ちゃんみな!』って歓声をあげている。“私を助けてくれた人!”っていう魂の叫びがお客さん側からすごい出ていて」と語っているほどだ。
ちゃんみなの人気の理由を考えてみると、自身の体験を綴った歌詞と圧倒的な歌唱力が魅力的であることはもちろん、「強い部分も、弱い部分も、そのままの自分を見せるアーティスト」であることも挙げられるだろう。昨今、「ルッキズム」という言葉が今まで以上に広がり、容姿に言及する必要がないという考えが根づきつつある。しかし、その裏では今まで以上に容姿が重要視される場面があることもまた事実だ。それによって、エンターテインメントの世界では才能に日の目が当たらない可能性もある。そして、ちゃんみな自身も、見た目や声について否定された過去を持ち、その流れに飲み込まれそうになったことがあるひとりだ。実際、【No No Girls】の中でも、「(ダンスの)先生に言われてたんだよ。みなちゃんは黒なんだよって。黒だからダメなんだよって。みなちゃんが1人下手なだけで、端にいても全員黒にしちゃう。だから真ん中に行くくらい上手になるか、1人でやんなさいって」と語っている場面が度々出てくる。しかし、彼女は腐るのではなく、ダンスを頑張りつつも「本当にやりたいのは声を届けたい、歌いたい」と気づき、自分の武器を探して磨いてきた。そして、「No」と言われる世界に一石を投じ、ありのままの自分を愛することを行動で示したのである。
中でも、【AREA OF DIAMOND】で披露された「美人」では、曲中に自身でメイクを落とす演出があり、話題になったことは記憶に新しい。MCでは「みんな飾らなくてもダイヤのようにきれいだと伝えたくて、この方法を取りました。あなたがなりたいものになってください。何にも囚われず、失敗を恐れずに突き進んでください」と語り、多くの共感と称賛を集めたのだ。
美人(AREA OF DIAMOND @ 横浜アリーナ) / ちゃんみな
そんなちゃんみなのアティテュードが、そのまま反映されているのが【No No Girls】。掲げられている「身長、体重、年齢はいりません。ただ、あなたの声と人生を見せてください」というメッセージひとつとっても、彼女のアティテュードが投影されていることがわかる。そして、身長、体重、年齢など一切問わない代わりに、ちゃんみなは「No FAKE=本物であれ」「No LAZE=誰よりも一生懸命であれ」「No HATE=自分に中指を立てるな」という「3つのNo」をアーティストに求めた。そこに集まったのが、見た目、体型、声、年齢などに“「No」をつきつけられた”り、自分自身を否定してきた参加者たちだ。
番組を見ていると、はじめは「3つのNo」に寄り添おうとしても寄り添えない参加者たちが多々存在した。しかし、とことん自分と向き合い、仲間と切磋琢磨していくことで徐々に成長を遂げていく。さらに、ちゃんみなの愛ある言葉が加わることで輝きはじめた参加者も少なくない。その様子を見ていると、こちらまでエンパワーされるかのように心が軽くなる。
そして、同オーディションではちゃんみなの指導者としての才能も輝いている。彼女は厳しくも愛のある目線、そして自分のブレない考えに基づいて、参加者たちへ徹底的に寄り添っている。中でも、脱落してしまった参加者に贈る言葉にグッときた方も多いはずだ。たとえば、三次審査終了後。ちゃんみなはSKY-HIとともに脱落者たちのもとを訪れて声をかける。「(脱落してしまったのは)方向性の話であって、決してダメでしたっていうふうに受け止めないでほしい」「違う形で何かやってほしい、音楽をやってほしいなと思う」と声を掛けつつ、過去の自分の話も語っていく。「みなちゃんは黒」と言われた先生に、「表舞台に立つ仕事ではなく、裏側の道を考えたほうがいい」も言われたと話しつつ、「でも私は絶対に歌うことがよかったし、絶対に歌を作ることがよかったの。私と同じ気持ちの子がこの中にもいると思うんだけど、そうやって思っている時点で絶対に大丈夫。どんな形でも絶対に咲くの、その花って。私の場合、咲いた花ってトゲトゲしてたと思うし、不格好な花だったと最初は思うけど、でも今その花を好きって言ってくれる人がたくさんいるんだよね。みんなも私と同じタイプなんだって思ってほしい。私が励みになるかわからないけど、私は今幸せなんだよ」という言葉を贈っていったのだ。それだけでなく、「諦めることもOKだよ」と違う道を模索することも否定せずに受け止める。なんと愛に溢れている瞬間なのだろうか。そして、そんな言葉をかけられるちゃんみなだからこそ、成り立っているオーディションなのだとも改めて感じた瞬間であった。
【No No Girls】Ep.04 / 3rd Round -No=Yes-
【No No Girls】は現在#12、5次審査まで終了し、残るは神奈川・Kアリーナ横浜で2025年1月11日に開催される最終審査を残すのみとなった。最後の最後まで参加者たち行く末、そしてちゃんみなの言葉に刮目していきたい。
公演情報
【No No Girls THE FINAL】
開場 14:30 / 開演 16:00
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